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八犬伝 -東方異聞-

第2章 境界


―しかし、そんな信乃達の心配を他所に、事件は起きてしまう。

それは、あの日から数日後のことだった。この日の朝方信乃は、お腹に感じる強い痛みで、何時もよりもだいぶ早くに目を覚ました。

『ん・・・・・・うぅんっ・・・・・・・・・ぁぅ・・・んっ・・・』

何時からだったか。最初は小さかったお腹の痛みが、空が白み始めた頃には、既に鈍く強い痛みへと変わっていた。寝返りを打ったりしながら、その痛みに耐えていたのだが、遂に痛みに耐えきれず、痛む腹を摩りながらゆっくりと起き上がる。

『・・・っ・・・はぁ、はぁ・・・村雨?・・・ねぇ村雨、どうしたの?』

村雨「・・・しのー・・・ムラサメしばらくお休みするー」

『・・・はぁ・・・ぅっ どうしたの?急に。』

村雨「最近この辺空気がわるいのー ムラサメ動きづらくてツカレチャッター そーいうことナノー だからしばらくバイバイナノー」

『え、ぅんっ ちょ、ちょっと村雨!? 村雨ってば!!・・・はあぁぁ・・・っ・・・』

痛みに耐えながら、必死に村雨を呼んでみるが、相手はあの気まぐれで気分屋な村雨だ。幾ら呼んでみたところで、村雨が再び起きてくる気配はなかった。
次第に信乃も、村雨を起こすことを諦め、目が冴えてしまったので少しでも痛みを和らげる薬を飲む為に、音を立てないようにドアを開け、台所のあるリビングへと向かった。―しかし、信乃は気付かなかったが、一人、信乃の異変に一早く気付いた人がいた。




―同じ時間、荘介の部屋。

『ん……ぅぅんっ…ぁぅ・・・んっ』

(荘介「…信乃? 何か…あったのでしょうか? それに…この血の様な臭いわ…?」)

この日の朝方、荘介は、隣の信乃の部屋から聞こえてくる信乃の、苦しそうな声と何度も寝返りを打つ音で目が覚めた。

暫くそのままの状態で聞き耳を立てていると、信乃と村雨が小声だが、言い争っているような声が聞こえてきた。

『…っ…はぁ、はぁ…〜?…ねぇ…〜?』

村雨「…しのー…ムラサメしばらく…」

『…はぁ…ぅっ…〜?』

村雨「〜この…そーいうことナノー だから…」

『え、ぅんっ ちょ、ちょっと村雨!? 村雨ってば!!・・・はあぁぁ・・・っ・・・』

また暫くした後、信乃が部屋のドアを開ける音が聞こえ、不信に思い後を追うことにした。
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