第1章 彼や彼との出会いかた
残された紗希は、相変わらず下をむいたまま、身を堅くしている。怖がっているらしかった。
まあ、襲ってきた男と、強面の土方なんかの部屋にひとりで取り残されたら、そりゃ怖いだろうな。
新しく咥えた煙草に火をつけ、土方が口を開く。びくついている紗希を気にかけてか、態度が少し柔らかくなった。
「……足して二で割ったら丁度いいんだがな」
紗希と花梨の性格のことを言っているんだろう。
ちらりとこちらの様子をうかがってきた紗希。目が合う。するとすぐ、困ったように、また視線を自分の手元へ向けてしまう。
本当、いじめがいがあるのに。
先ほど。昼寝をしようと、場所をさがしていると、噂の新人をみつけた。こいつはひとり、部屋で荷物を片付けているようだった。淡い琥珀色の髪を右耳の横でふわりとひとつにまとめている。幼さの残る愛らしい顔に、やわらかな雰囲気をもつ少女。桜色の生地に白い花が咲く春らしい着物が、とてもよく似合う。
いい玩具が手に入ると思った。
まずは優しくして、完全に落とそうと近づいたつもりだった。沖田の呼びかけにこたえて、部屋を出て来ようとしたそいつは、置いてあった段ボールに躓いて、沖田の胸に飛び込んできた。そのあとの、焦りまくって真っ赤な顔で謝ってくるそいつの姿といったら。沖田のS心を最上級に掻き立てた。
落とすとかは、あとでいい。とりあえず、いじめたい。
花梨の邪魔が入らなければ、今頃楽しかったろうに。
「まあ、なんだ」
土方の声に、紗希はびくん、と肩を震わせた。
「……あのなァ、誰もとって食ったり……」
ちらりと土方がこちらを見た。
誰も取って食ったりしねえから、んなビクビクすんな的なことを言いたかったんだろうが。まあ、オレがついさっき取って喰おうとしたからねィ。
言葉に詰まったらしい。