第1章 彼や彼との出会いかた
今回、新入隊士募集につき、女が採用された。ひとりはここで抗議をしている神崎花梨。こいつは屯所に来るや否や、道場に居た隊士を片っ端からのしていったなかなか腕のある、おまけにかなり気の強い、22歳。一応、三番隊に配属されることになっている。もう一人は、長い金髪をなびかせ、挨拶だけして姿を消した、城田由紀。誰もが認めるだろう美貌の持ち主で、計算高そうな、何を考えているのか読めない女。年齢はわからないが、大人の色気ムンムンのお姉さん。監察に配属される。
「手が空いているときは鉄と一緒にこっちも手伝ってくれるそうだ、だろ?」
「は、はい」
土方の急なフリに、紗希はひっくり返った声で返事をした。
花梨がまた一歩前へでる。
「副長、話の方向をずらさないでください。こんなことがあった以上、紗希をあなた方のところへ行かせるなんてできません。隊内での異性行為を禁止するよう、局中法度に加えてください。これじゃあ仕事に差し支えます。二度と紗希に近づかないで」
胡坐(あぐら)をかいたままフーっと煙草の煙を吐く副長を、花梨は睨みつけている。
妙な間が空く。
土方がかもす空気が少し変わった。それを感じてか,
紗希がじっと身を堅くしたまま動かない。下を向いたまま、耐えるようなその顔は、沖田の欲望を掻き立てる。
本当、いじめたくなる。
襖の向こうから、何人かの隊士たちがこちらを覗きこんでいる。
「おい神崎。席外せ」
煙草の火を消しながら、低い声で土方が言った。
「なぜです」
「上司の言うことは聞くもんだ。ここでのやり方が気にくわねーなら今すぐ出て行ってもかまわねーんだぜ」
押し黙る花梨。
上司と部下、という絶対的な関係。さすがの花梨も、せっかく決まった就職先を追われるような真似はしないらしい。
威勢がいいのも結構だが、ほどほどにしねーと、な。
「先に紗希と話しをする。総悟、お前も残れ」
「へーへー」
返事の仕方が気に食わなかったのか、花梨は一度、沖田をギっと睨みつけてから、不満そうにしながらも、指示に従った。ふてくされたように部屋を出て行く。