第4章 無茶な頑張りかた
「座ってろ」
そう言葉を投げかけたのは、珍しく後ろの方に座っている沖田隊長。さっき紗希の名前を呼んだのもこの声だ。
「でも……」
おそるおそる副長の方を見るが、こちらのことはもう気にかけていない様子だった。でも立っているよう言われたのだから、そうしていないといけないんじゃ……とためらっていると、沖田隊長から有無を言わせない鋭い視線が。「二度言わせるんじゃねえ」と訴えるように睨んでくる。
こっちの方が、従わないとあとで副長よりも面倒だし、なによりもう限界だったため、紗希はその場で膝を折った。
もう会議で何を言っているのかなんて全く頭に入ってこない。
話が終わって雑談が聞こえてくるまで、紗希は足をくずしたまま睡魔と闘っていた。変な注目を浴びたせいか、緊張で、いつの間にかべったりと汗をかいていた。
「紗希ちゃん、部屋まで一緒に行くよ」
ばらばらと隊士が部屋を出て行く中、声をかけてきたのは山崎だった。今日は皆、作戦に従って忙しいのだが、監察の山崎は自分の裁量で動いているので紗希に構う余裕があるらしい。
「大丈夫?」
「すみません本当に。大丈夫です」
あんまり迷惑かけるわけにはいかない。屯所の掃除もあるし、明日までの書類もまだできてないし。今日やらなければならない事はたくさんあるのだ。雑談しながら悠長にやってはいられない。
笑顔で申し出を断って部屋を出る。忙しそうに出動していく隊士の中には、ちらちらと紗希を振り返る者もいる。すごく目立ってしまったのだし、真面目な会議での粗相に、恥ずかしいというか、申し訳ない思いでいっぱいになる。
大勢の黒い制服姿の隊士に続いて部屋を出た。この時、鈍い頭痛がしていて、目の奥がずーんと重くなる。
あれ……あれれ……。
何かおかしい。目の視界から色が消え、平衡感覚がおかしくなる。徐々に景色が暗くなっていく。
ああ、これはやばいかも、と思った瞬間、紗希は唐突に意識を失った。