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紗希物語【銀魂】

第4章 無茶な頑張りかた


 ふと、またうとうとしていたことに気がついた。顔を上げると、皆が後ろを振り返り、紗希に視線が集中していた。びっくりして、何だろうと必死に状況把握に努めると、低い声で副長が言った。

「ナメてんのか」

 かなり怒っているご様子。はっきりと紗希に向けられた指摘にカァァァっと顔が熱くなる。

 確か今日は連日にわたって計画されていた重要な作戦の決行日だから、皆真剣だし少しピリピリしているんだ。すみませんと、声に出して言ってみるが小さすぎて副長の元まで届いたかどうかは怪しい。申し訳ないのと、周りの視線が痛いのとで、瞬間的に意識ははっきり覚醒した。

 皆が真剣な時に、自分だけうとうとしていたなんて。まるで自分には関係の無いと思っているみたいに。今日怪我をして帰ってくる隊士だっているかもしれないのに。自分はずっと屯所にいるから何の心配もないわけで……

「気合が足りねえなら立ってろ」

 紗希は立ち上がり、部屋の隅っこへ待機。少し室内がざわざわした。紗希を擁護する声が聞こえる。「かわいそう」「女の子なのに」等……。

「うるせぇな! 女だろうがここにいる以上容赦しねえぞォ!」

 周りの隊士を一括する。

 わかっています副長……。

 空気は完全にアンチ副長だったけれど、悪いのは自分だし、副長の言うことは正しい。

 話が元に戻ると、紗希は再び襲ってきた強い眠気と戦うことになった。先ほど注目を浴びて恥ずかしい思いをし、眠気なんてふっとんだと思っていたのに。

 苦しい。

 自力で立っているのは本当に辛かった。後ろの襖に背中をあずけるが、外れてしまっては困るのでそれほど体重をあずけることもできない。立ったまま眠ってしまいそう。足元がふらつく。頭がくらくらしてきた。

「紗希」

 聞きなれた声が意識の中にすっと入ってきた。

 気がつけば、再び周囲の注目を浴びていた。と言っても、前の方では隊長が立って連絡が続いているし、後ろの様子に気づいていない隊士も多い。それでも、すごく申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
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