第4章 無茶な頑張りかた
体が浮いたような妙な感覚。上も下も、自分がどっちを向いてどんな格好をしているのかもわからない。
そんな感覚の中で、目が覚めた。
見覚えのある天井と白いカーテン。仰向けに寝ているらしい。それがわかると、ずっしりと体が重く感じた。無重力空間から一気に重力空間へ落とされたみたいに。鈍い頭痛がする。
「お。よお、大丈夫か?」
聞き覚えのある声……。
見れば銀時がいた。紗希が寝ているベッドの脇でイスに座って、やさしい眼差がこちらに向いている。
一瞬、叫びそうになり、とっさに手で自分の顔を隠した。びっくりしたのだ。変な寝癖がついていないか確かめ、急いで髪を整える。
「あの、どうして銀さんが……?」
「どうしてって、いとしの紗希ちゃんが倒れたって聞いたらそりゃ飛んでくるだろ」
倒れた? うそ……やば。
「へへ……」
ごまかし笑いをするしかない。
眠かったのは、体の調子がおかしかったんだ。
脱力感というか、体に力が全然入らない。まだ回復していないということだろうか。
「今日は一日ここで入院。明日と明後日は仕事しなくていいらしいぞ。ウチに来るか?」
あ、いいな。銀さんち行きたい。
一瞬そんな風に思った。
銀さんちに行きたい。一緒にいたいな。
でも、職場に居づらいからって逃げてしまっては、これからも辛いままだし、解決しない。戻りたくなくなっちゃうし。
「ううん。屯所に戻るよ。大丈夫そうだったら仕事もしたいし、わたし、もっとちゃんと……」
「紗希」
やさしい、でも強い声が遮った。
「なんにも心配いらねえよ。おまえ、ちょっと無理しすぎだな」
「無理なんてしてないよ」
「してんだよ」
銀時が大きな手を紗希の額に乗せた。あたたかい手が頭を包み込む。
「お前は少し、無理し過ぎ」
ううん、違うの。出来ないことが、多すぎて……
「なら、今度また一緒に出掛けようぜ。桜も見頃になってきたし」
「お花見ってこと?」
「まあ、そーいうこったな」
「……いいね。いいかも。行きたい」
「決まりだな」