第4章 無茶な頑張りかた
バンッ! と背中に衝撃。
誰かとぶつかってしまった。転ぶようなことはなかったが、謝ろうとした言葉が不自然に吐き出せなくなった。息ができない。吐けない。肺が痙攣をおこしたかのようにひっひっひっひ、と引き攣る。止まらない。
何これ、おかしい、どうしよう。
体に力が入らずに、崩れるようにして紗希は床に座り込んだ。
「ご、ごめん! 大丈夫⁈」
ごめんなさい、ごめんなさい。謝らなきゃいけないのはこっちなのに。
朝の稽古の真っ最中、戸田が相手をしてくれていたとき、誰かと背中からぶつかったのだ。
息ができない。苦しい……!
「うわ、え、何?」
「え、どうした?」
あわあわと、まわりが戸惑って紗希を取り囲む。
「ちょっと退いて! 退いてってば!」
花梨が駆け寄ってくる。沖田も異変に気付いて近寄ってきた。
いやだ、来なくていい。見られたくない。どうしよ……!
「花梨さんオレ……!」
紗希とぶつかったであろう隊士が、不安そうな声をあげる。
「あー、大丈夫、大丈夫。ちょっと退いて。紗希、おいで」
「紗希ちゃんごめん……!」
ごめんなさい、ごめんなさい。謝らないといけないのはわたしの方なのに。
花梨に背負われ、連れていかれたのは医務室だった。
「かり……ちゃ……ごめ」
浅く早い呼吸が止められない中、何とか言葉にするも、花梨は背中をさすりながら、紗希の口にビニール袋を押し当てた。
「いいから、いいから。ちょっと休んだら平気よ。やっぱり大変よね、あんたはもうやんなくていいから」
いやだよ、そんなの。わたしだって、強くなりたいのに。
「ごめ……」
「もういいの。落ちついてきた?」
呼吸が少し、楽になってきた。
みんな引いただろうか。過呼吸起こしちゃうなんて……。