第4章 無茶な頑張りかた
むっとなった紗希は竹刀を拾うと、勢いをつけて仕返しをしに行く……が、むかい打った沖田の力は強かった。ぶつかり合った竹刀。押し負ける形で紗希は軽く吹っ飛ばされる。背中から床に叩きつけられるように転がった。
「軽すぎ。その体格じゃあしょうがねーけど、もうちょい足腰鍛えねーと話になんねぇ。あと、バランス悪すぎ、よろけすぎ。おまけに受け身もとれねーのかィ」
お尻も痛いし、背中も。あと、体のあちこちがじんじん痛い。思わず蹲って両腕をさすった。顔を上げれば、取り巻くようにして、隊士たちがこちらを眺めていた。
みっともない。
惨めな気持ちでいっぱいになる。
「あー……ねえ、沖田隊長、あたしが見るわ」
その中から、花梨が一歩前に出る。
「ああ? おめーはおめーでやることあんだろーが」
「見てくれるのはうれしいんだけど、そんな本格的じゃなくていいわ。この子には無理なの」
守ってくれているようでも、紗希にはズキズキと言葉の棘が刺さる。
そんなこと……!
「何でんなことテメーが決める」
不意に割って入ってきたのは土方だった。鋭い目つきが睨むと、取り巻いていた隊士たちは自分の稽古に戻った。道場内が、再び喧騒で満たされる。
「紗希には無理なの。戦う方法何て知らなくていい」
「自分の身も守れねえ奴はここにいることはできねーよ」
さらりと流して土方は周囲に向かって声を張った。
「素振りからだ。とっとと始めるぞ」
土方の一声で、みんなは打ち合いをやめて、木刀に持ち替え、並ぶ。決まった場所なのか、気まぐれに並んでいるのかはわからないけど。
紗希も列の一番後ろについて、マネをする。力強い掛け声と、木刀が風を切る音が鳴る。でも、木刀は重く、振り続けるのは想像以上に大変だった。数が行くほど紗希のペースはみんなからどんどん遅れていく。ビュン、ビュン、と勢いよく音が一斉に鳴る中、紗希はゆらゆらと腕を上げ下げするのが精いっぱい。
前の方にいる花梨はしっかりとみんなのペースについているのに。
止めの合図がかかるころには、紗希は力尽きてヘロヘロと床に座り込んでしまった。