第4章 無茶な頑張りかた
戸田が先の出来事を説明する。
じんじんと痛む腕をさすりながら、紗希も、よく同じ電車に乗り合わせて顔を知っていたことや、傘に入れてあげようとしたこと等を話した。すると、ふたりの顔色が変わる。呆れたような、さげすんだようなじとっとした目で見下ろしてくる沖田。戸田も、「はあ」とため息をついて苦笑した。
「それってストーカーじゃない? 好意的に話しかけて、刺激しちゃったわけだね」
「ストーカーって……今まで何もなかったのにそんな」
「現に今その何かがあったんだろーが。テメーからきっかけ作ってどーすんだよ」
怖っ……沖田隊長、今日機嫌悪い。
「外出禁止な」
「え……あ、は⁈」
思わず失礼な聞き返し方をしてしまった。そりゃ、いつもいつもこんな、決して丁寧とは言えない言葉遣いをする人たちに囲まれていたら、しょうがない。弁解の助け舟を求めるように戸田を見上げるも、彼も肩をすくめた。
「残念だけど、僕も沖田隊長に賛成。真選組関係者だって知られてないとも限らないし、ただのストーカーならまだしも、テロリストに狙われる可能性だって十分ありえる。まともな護身術ができるようにならない限りは、ちょっとあぶないかも」
正論に思えた。沖田に逆らいたくないとかじゃなく、彼も率直にそう思っているらしい。
「とりあえず、屯所まで送るから」
無言でスタスタ先に行ってしまう沖田とは対照的に、戸田は優しい。でも逆にそれが、なんだか自分をとても情けなく感じさせた。