第3章 仕事のしかた
「つーか、暇ならヒザかしてくんない?」
「ひざ?」
なにかと思えば、沖田はアイマスクをつけたまま、頭を浮かせて、その下の床をポンポンとたたいた。
あ、膝枕してほしいってこと、かな。
他の隊士も行ってしまって、今は誰の目もない。
紗希は、沖田の頭の横に、膝を折って座る。
なんか緊張する。
事件以来、沖田との絡みがあまりなかった。見かけても、とくにからかってくることもなく、こちらから挨拶をしても、ほとんど無視されて、すぐに離れて行ってしまったから。
太ももの上に、沖田の頭が乗っている。
アイマスクをしているから、目があわないだけ、いいのかも。なんて思っていたら。ひょいっと、アイマスクを持ち上げて、覗き見てきた沖田。
ドクンと心臓が跳ねた。
恥ずかしいので、紗希は顔をそらした。そっぽをむく。
この人は苦手。
いじわるばっかりしてくるし。
なのに、すごくかっこいいから、立ち振る舞いとか雰囲気とかも全部。だから、なんていうか、すごく緊張する。
「今、オレたち以外、ここには誰もいねえ」
「はい?」
沖田は、またアイマスクをつけて紗希のお腹の方を向いた。
「この前みたいなことされたら、とか考えねーのかィ?」
「この前みたいなこと、ですか?」
この前みたいなこと……。あの、思い当たる節が多すぎて、どのこと言ってるのかわかんないんですけど……。
突然縛り上げようとしたり、服を脱がそうとしたり、檻に閉じ込めようとしたり。
「まあ、いいけど」
紗希の緊張をよそに、沖田は本格的に寝ようとしているらしい。
昼下がり。
沖田を見ていたら、なんだか力が抜けてきた。太ももにかかる重みが心地いい。
「辞めねーの?」
「ええ?」
「向いてねーって言ったろィ。別にあの二人と一緒にいてーなら、真選組にこなくても、江戸で一緒に暮らすことは」
「でも……」
それじゃあダメだから。
「わたしふたりの力になりたいんです。由紀さんに、返したい恩があるから」
それに……