第3章 仕事のしかた
これで全部か……? 敵はだいたいいなくなった。大人しく投降した奴らは全員縛り上げ、連行し、残りは、斬った。
そろそろ抜けても大丈夫そうか。
そう判断した沖田は、急いで、エレベーター近くの一室へ引き返した。
「紗希! 無事か……」
急いで駈けつけて見れば、紗希は、畳に転がっている攘夷浪士の傍らに座り込んでいた。泣きながら、震える手で、攘夷浪士の傷を抑えている。反対側に転がっているもう一方の攘夷志士の身体には、彼女の着物の帯の紐が巻きつけられている。
……あーあ。
分かっていた。
紗希はこういうやつなんだ。
だから嫌だったんだ。
紗希の手首に締めつけたような跡がある。逃がすときに沖田が掴んでいたところだ。
「止血なんてしたって無駄だぜィ」
パニックを起こしているのか、不規則な速い呼吸をする紗希。
見下ろして、冷たく言い放つ。
「こいつらはオレが斬った」
全員、即死だ。しとめ損ねれば逆襲を食らう。やらなきゃこっちがやられる。
敵さんのために涙をながして、手当てをしてやる。紗希、だからおめーは、こんなところにいるべきじゃねーっつたんだ。
紗希の腕を掴んで引っぱり上げる。さっきオレが掴んで痣になっているところを。もう一度強く掴みあげる。
「立ちな」
一向に力を入れようとしない、紗希。どうやら腰を抜かしているらしい。それにこの呼吸。過呼吸でも起こしたか……。
「こいつの味方だってーならおめーも叩き斬るぜい」
ようやく、紗希は沖田を見た。
吐き気を催しているのか、何度もその不規則な呼吸をつめる。かなり苦しそうだ。真っ白な顔色をしている。震えているのがわかった。
バタバタといくつか足音が近づいてくる。
「沖田隊長! 確認終わりました。この館内の賊の制圧は完了したようっス!」
「神山」
「はい!」
「他の奴ら連れてさきに上に行ってろ」
部下を行かせて、沖田は紗希の傍らにしゃがみこんだ。