第3章 仕事のしかた
大きな音で目を覚ました。
あれ。
いつの間に寝ちゃったんだろう。
座布団の上で眠ってしまったらしい。広い部屋には誰もいないが、いつの間にか、毛布が身体に掛けられていた。休憩で戻ってきた誰かが、掛けてくれたんだろう。すこし散らかった部屋の様子から、誰か来ていたことが分かる。
悪かったな……。わたし寝ちゃってて。
時計を見ると、夜の10時を過ぎていた。
ドーン! っと、大太鼓を叩いたような、低い音が振動とともに響いてくる。なんだろう。騒がしいな……。
「あっ」
机の上に、携帯電話が置いてある。
これ、たしか鉄さんの……。
連絡がとれないとあっては、副長から怒られてしまうかもしれない。届けなくちゃ。
部屋の外へでると、またドーンという重低音が聞こえてきた。
「宴会でもやってるのかなあ……?」
エレベーターに乗って、3階まで下りて行く。
5階あたりから、わーわーと、騒いでいる声が大きくなってきた。
3階につくころには、お皿の割れるような音がガシャンガシャン鳴っていた。呑気にドアの方へ一歩近づく。
派手にやらかしてるなあ……。
エレベーターの扉が開く。
突然、腕に焼けるような痛みが走った。
え……
刀を振り回しながら、何人もの浪士たちが、エレベーターに乗り込んできた。ドタドタと音を立てて、すごい勢いだ。
「やっ」
恐ろしい形相、いかつい体躯の浪士たちを前に、一瞬で身が竦んだ。邪魔だとののしられ、突き飛ばされる。背中を壁にぶつけて、尻もちをついた。乗り込んでくる浪士に足を踏まれる。
目の前で、刃がちらちら光る。
「行かせるなー!」
その叫び声が聞こえた直後。耳をつんざくような爆発音。爆風。衝撃。声を上げたはずなのに、自分の悲鳴も全く聞こえなかった。パラパラと、堅い破片が、頭の上から落ちてくる。
反射的に、両手で頭を抱えるようにして蹲った。