第3章 仕事のしかた
旅館は、それはそれは、きれいで豪華な造りだった。
接客もすばらしいし、絵や掛け軸、屏風なども高級のものばかり。7階にある紗希たちの客間は三つの部屋に仕切ることができる大広間で、大きな窓からは渓谷が望める。すごくいい眺め。
一応女性用のスペースということで、由紀と花梨と一緒に、隅の部屋を仕切ってもらってある。けれど、みんなでこの大部屋を休憩に使うことになっている。警護につく時間がほとんどだから、交代で数人が滞在する程度。露天風呂も大きいものがあるらしいし、さっそく入りに行きたい気もするけれど。
「荷物置いたらすぐ行くぞ」
副長が指示を出す。みんな働いているのに、自分だけくつろぐなんてできない。
「戻って来たときに皆が休めるようにしておいてくれ」
副長からの指示はこれだけ。
みんな出て行ってしまったあと。独り、部屋に残される。
みんながちゃんと休憩できるようにしておくには……。
広い部屋に並べられた机。その上に置かれているポットのお湯や、お茶菓子を確認し、仮眠もとれるように、部屋の隅にいくつか布団も敷いておく。あとは、お風呂に入りたい人もいるかもしれないから、バスタオルや洗面用具を引っぱりだして並べて置いた。広い部屋が、飲食コーナーと、仮眠コーナー、お風呂コーナーみたいにわかれた。
こんな感じで、あとは戻って来た人の要望に従って動けばいいかな。
広い部屋。
「ヒマだな……」
屋敷の中をうろうろするのはダメって言われているし。
持ってきた本を取り出した。