第1章 彼や彼との出会いかた
「いいよ、気に入らなかったらヤリ逃げでもなんでもすればいい。だが、面倒を見てもいいという気が起こったら、口説き落として引き取ってくれ。アタシからの最初で最後の頼みだ」
「勘弁しろよ、んな面倒ごとごめんだっつーの」
「昨晩追いだしたあのチャイナ娘、歳はいくつだ? 世話をやいているんだろう? いつからロリコンになった」
「ちげーよ! あいつはただの居候だ、変な妄想すんじゃねーよ」
「アタシがここへ来てから5分と待たずに手を出してきたくせに。信用できないねえ」
「ああ? おめーだってノリノリだったじゃあねえか。それにな、信用できねえよーな男に誰かを嫁がせようとか思ってんじゃねえーよ」
「頼むよ。お前にだって、悪くない話だろう」
「おい」
「銀時。あの娘を、このままアタシのところに置いとくわけにもいかないんだ」
「なんでそんなこと言いだすんだ? おめーらしくもねえ」
「……アタシはなァ、銀時。アタシは……」
顔を見れば、弱気な瞳がそこにあった。いつもはキリっとつり上がった目。何一つ迷いのないそのキレイな蒼い瞳が今は、なんだか少し、悲しそう。
はあ―。
続きをする気がなくなった。いつも整った、強気なこの女を乱すのがめちゃくちゃ楽しかっただけだ。こんな弱い由紀を、玩んでもそんなに面白くない。
つっても昨晩からもう何度もヤりまくっていたわけだけど。
「しないのか」
「お前が萎えること言うからだろ。足りねえならもっかい興奮させてみ」
「はあ……風呂場を借りる」
銀時としてはもう一回してもよかったが、由紀は疲れた様子で着物を羽織った。
帰り際に、机の上に分厚い茶封筒を置いて行った。持ってみれば、ずっしり重い。中には、諭吉の束が入っていた。二百はあるだろうか。
『前金だ。近いうちに、ここに来させる』そう書かれたメモが入っている。
突然訪ねてきたと思ったら、面倒事押しつけやがって……。
こんな大金用意するなんて。由紀がその娘を大切にしていることが伺える。もっと他に適任がいるだろうに。
とりあえず、今月の家賃分だけ封筒から抜きとった。