第2章 デートのしかた
紗希は、左サイドに、両足を投げるようにして座った。ヘルメットを頭に乗せられる。銀時の服を掴んで、捕まっていたら、お腹に手をまわして、抱きつく格好に直された。
「なに、乗ったことねえーの? こういうの」
「……ないよ?」
なんかちょっと、悔しい。しかも、ちょっと怖い。バイクが倒れそうで。銀時の着物を握りしめ、つい、しがみつくように強く抱きついてしまう。
「うーし、じゃあ行くか。どっか行きてぇとことかあるか?」
ゆっくり走りながら、銀時が言った。
行きたいところ……。思い浮かばなくて考えていると、
「まあ、分かんねえわな。運動でもするか? ウサも晴れるしよ。ボーリングは?」
「うん」
ボーリング。やったことなくて、勝手がわからず、何から何まで教えてもらうことになった。
「で、なるべく多く倒せばいいんだよ。一回やるぞ?」
銀時が転がしたボールは、重低音を響かせながらすごい速度で転がって――
パコーン! カラカラカラ……
「こうやって全部倒せればイチバンいいわけ」
「すごーい銀さん!」
ボールはすべてのピンを弾き飛ばした。紗希がしゃぐと、銀時は手のひらをこっちに向ける。
ハイターッチ!
紗希の番。
「重いねボール」
「っとっと! 落とすなよ?! 足の上とか落としたらエライことになんぞ」
「大丈夫おとさないよ」
「ちょ、待ってろ。もうひとつ小さいのもってくっから」
「ええ? いいよこれで」
「あぶねーんだもんよお。ちょ……転ぶなよ」
「うん!」
見よう見まねで、ピンに向かってボールを転がす。
コロコロコロコロコロ……
ずいぶんゆっくり転がっていく気がする。
コトン。カランカランカラン……
真ん中に当たって、ドミノ倒しのように倒れて行く、ピン。右の一本だけが残った。
「わあー! すごーい! ねえ銀さん! これってすごい?」
ふり返ったら、頬杖をついて、銀時はちょっと笑っていた。
「すごいすごい。次、よーく狙えよ?」
「うん!」
隣のレーンの人たちの視線が気になった。紗希よりも少し年上くらいの、男性グループ3人組。銀時が投げてるときに「ねえ、あれ彼氏?」とひとりが話しかけてきて「ちがいますよ」から始まって、途中から一緒になってみんなで盛り上がった。