第2章 デートのしかた
「銀さんて、いっつもこんな風に女の人口説いてるの?」
「おいおい、ひでーな。んな軽い男に見えてるワケ? オレって。おまえ、オレが女と手ェ繋いで歩いてるとこ見たことあんの?」
「……ないよ?」
「だろ」
ないよ。だって。銀さん、ひとりで歌舞伎町に来るなって言ったし。会いに行けないし。いつもどんな風に生活してるとか知らないし、街で見かけることなんて……ないもん。
路地を抜ける寸前。
「旦那ァ。うちのモン、たぶらかしてもらっちゃあ困りまさァ」
沖田がいた。
いつからいたのか分からない。追いかけてきたのかも。空き箱の上に腰を降ろして、壁に寄り掛かっているそのラフな体勢からして、話を聞いていたのかもしれない。
一番会いたくない人物、一番顔を見たくない人物の登場に、紗希は思わず、一歩下がった。銀時の後ろに隠れる形になってしまう。
それを見て、不機嫌そうな顔をする、沖田。
「そいつァ、真選組(ウチ)のもんなんで、引き取りまさァ。世話かけさせちまったようですいやせん。紗希」
名前を呼ぶ、低めの声。
来い、という命令の意が含まれている。
行かなくちゃ、いけない……。
行かなくちゃ…………
足を踏み出そうとした、その瞬間。
ドカッ!
目の前に空き箱が散らばった。繋いでいた手が引っぱられて、沖田の脇をすり抜ける。半ば抱えられるようにして。
あっと言う間もなく乗せられたのは、原付。そのまま、大通りを激走する。びっくりしたのと、怖いのとで、目の前の背中にしがみついた。
少しして、原付は速度を落としていき、止まる。
「び、びっくりしたァ……いきなり」
「ああ? 帰りたくなかったんだろ」
「でも、沖田さんが……」
「今さら帰るなんて認めねーよ? つーか、おめーが帰ろうとしたところをオレが無理やり連れ去ったんだから大丈夫!」
いや、大丈夫じゃないよね?
「紗希は悪くねーだろ? つーか。今銀さん悪党だから。おめーを誘拐してんだから。言うこと聞かねーと悪いようにするぜ?」
「は、はあ……」
「よーし言うこと聞けよ? そーだな。これから、デートするか、デート」
「ええ?! ちょっと」
「文句は言わせませーん」