第2章 デートのしかた
「なんでも、ないよ」
泣くな。泣くな、紗希。
「銀さんは? どうし……」
スッと、銀時は、紗希の手を取ると、じっと見つめた。見ると手首に、紐で締めつけたような、アザができていた。
さっき、縛られた時の――
サァーっと恐怖が背筋をかけあがった。
「何でもない、大丈夫」
紗希はサッと手をひっこめた。
怪訝そうに、眉をひそめる、銀時。
「大丈夫。なんにもない、ね? ごめん泣いてて。もう大丈夫」
手を後ろに隠す。顔をあける。もう泣かない。大丈夫。
「…………そーかい。送っていくから。行くぞ」
銀時は大通りの方へ、歩き出す。紗希は、ついていかない。数歩進んで、振り返った、銀時。紗希は下を向く。
「……自分で帰るよ」
変な間が空く。
ツーっと、また涙か頬を伝っていく。
やば。もう泣かないと思ったのに。
手の震えが止まらない。
怖かったんだ。捕まった時。
スタスタと、戻ってくる足音。
顔を見られたくなくて、そっぽを向く。
泣くな、紗希。泣くな。
「自分で、帰るから、大丈夫。銀さん、今日はなにしてたの?」
「……んー? 今日はアレだよ。どっかにかわいい娘がいねーかなーと思ってぶらりぶらりだ」
「そっか」
「おうよ。どうだい? 一緒においしいケーキでも食べにいきませんか?」
「わたし?」
顔をあげると、優しくわらった銀時がすぐそこにいた。
紗希の前にひざまずくと、手を取る。ゆっくりと、その甲に唇を当てた。
キス。
ちゅっと音を立てて、唇を話す銀さん。
「どうです? おじょーさん」
銀さん……。
まるで魔法のよう。1回目のキスで、涙はとまっていた。2回目のキスで、震えがとまった。そして、3回目のキスで、体に力が戻ってきた。
「行く」
「決まりだな」
立ちあがる、背の高い、銀時。
格好いい。
こんな素敵なヒトに、こんな風に誘われたら、断れる女の人って、いるのかなあ……。
銀時に手を引かれて、ついて行く。手をつないで歩く。
恋人同士みたい。