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紗希物語【銀魂】

第2章 デートのしかた


 結構がんばったつもりだったのに。頑張ろうとしたのに。変なことされても、怖くても、ちゃんとしようってがんばったつもりだったのに。

 もう真選組なんか知らない。帰らない。

 わたしなんて、居なくたっていいんだから。もともといなくて普通だった。隊士になれないわたしを、無理に置いてくれていたわけなんだから。
 
 ポロポロと、涙が頬を伝っていく。
 
 でも……。

 それでも、由紀さんの元を離れるわけにはいなかい。わたしはあそこに居なくちゃ。でも、今日は帰りたくないよ。顔見たら、また怒っちゃいそうだし、泣きそう。

 もうやだ……。

 会いたくない。

 一日くらいいいよ。わたしなんて、一日くらいいなくてもなにも変わらない。明日こっそり帰ってケロっとしてればいいや。今日はどこかにいよう。

 手の甲で、拭っても拭っても、涙があふれてくる。

 山崎さんとか局長とか、やさしくしてくれる人もいるし、斎藤さんとか、原田さんとかだって、やさしいし……。

 多少いじめられたからって、囮にされたって、大丈夫だよ。もっと頑張れるよ。囮だってちゃんと捜査に協力できたわけだし。次は、前もって教えてくださいって言えばもう怖くないよ。辛かったら、泣いちゃえばいいんだから。泣いたらすっきりして、次からまた頑張れるよ。今日だって。ここなら泣いても人目につかないし。もういいや。
 
 泣きたいだけ、泣いたって――。

「なーにしてんだ?」

 いつからいたんだろう。

 黒いブーツに黒いズボン。水色の模様の入った白い着流し。見覚えのあるその立ち姿は、先日会った、銀時のものだった。

 泣いているの……見られた。

 そっぽを向いて、甲で涙をぬぐう。

 どうしよう。泣いてるの見られちゃった。

 なんて言ったらいいのかも、どうしたらいいのかもわからなくて、そっぽを向いたまま黙っていたら。

「おじょーさん」

 優しい口調。

 頭に手をふれてきた。やさしい手。

「言ってくれねーと分かんねーよ? 一体何がそんなに悲しいんだい?」

 優しい声を聞いて、また、涙があふれてくる。

 弱っ、わたし。バカじゃないの。
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