第2章 デートのしかた
「なんでィ。その顔ァ。使ってやったんだから、ありがたく思えよ」
沖田は、携帯をとりだした。何をするのかと思えば、パシャリと、紗希の泣き顔を写メに収めた。それから刀を抜くと、手足を縛っていた縄を切った。冷たくなった指先がビリビリしびれる。
「ほら。解いてやったんだからさっさと立ちな」
鎖のついた首輪をわたしにつけ、引っぱる。
わたしを何だと思って……
駕籠から出て、立ちあがる。足先がしびれて、すこしフラリとした。
首輪を外して、沖田に思い切り投げつける。
手でそれをはじいた沖田は少し、驚いた顔をした。
音を立てて鎖と首輪が地面に落ちる。
「帰らない! わたしを何だと思ってるの?! もうやだよお! もう知らない!」
言いたいことを言いきれないまま、踵を返して走った。
泣きながら。
わたしは、真選組にとって、なに?
止まらない涙。
呼びとめる声が後ろからした。みんなから離れたくて、追いかけられて捕まるなんて嫌で、必死に走った。とにかく離れたくて。
角を曲がったら、人通りの多い道に出た。
まだ追ってきているかもしれないと思うと、息が切れても止まる気にはなれない。疲れても涙は嗚咽と一緒にこみ上げてくる。息苦しくて、何度か咳き込んだ。それでも走る。
そんなに邪魔なの? そんなに必要無い? なんでこんな、こんな扱いされなきゃいけないの? わたしだって、一生懸命……
ドン! と通行人にぶつかってしまった。
「……! ごめんなさい……」
なんとかそう声に出し、もうぶつからないように道の隅へ寄る。人の視線が気になり、すぐ脇の路地に入った。
疲れたし、もう走れそうにない。それに、ここなら人がいない。ゴミ箱の傍らでしゃがみ込んで壁によりかかった。
疲れた。
酸素を肺いっぱいに取り入れる。
誰も追ってきていないみたい。
息が整ってくると、惨めな感情が湧いてくる。
やっぱりちゃんと扱ってもらえないのかな。