第2章 デートのしかた
「お兄さんたち。ちょいと、中改めさせてもらっていいかな?」
「いや……えっと」
「何だ? 問題ねーなら見せられるだろ」
土方の声もする。
ドスン! 鈍い衝撃。体が下に叩きつけられ跳ねた。籠が地面に落とされたらしい。
「逃がすな追えー!」
たくさんの足音が流れていく。
「おい、大丈夫か」
目隠しをはずされた。陽の眩しさが目に沁みる中、土方と沖田が籠の中を覗き込んでいた。手足が縛られているため、流れる涙をぬぐうことができず、泣き顔をさらすことになる。
「ありゃ。泣いちゃったー。もう大丈夫だから安心しな」
「なんで……」
まるで紗希が籠に入れられていることを知っていたみたいな落ち着きぶり。態度。
「しかし、ここまで上手く行くのも問題だな」
「なに言ってんです。計画通り。これほど都合のいいことはねえですぜい?」
計画……?
「おかげでこの山は早くかたづきますよ」
ジジ――『こちら三番隊。犯人確保しました』
「よーし。囮も無事に保護した。帰って売買先とルート吐かせるぞ」
オトリ……?
囮って、わたしが……
「わたしを、囮にしたんですか……?」
「泣くなって。いい仕事だったぜィ」
仕事って……コレ……?
土方は、さっさと行ってしまう。
「いいエサになるとは思ったが、まさかこうもあっさり釣れるとはねィ。奴ら、最近この辺りを騒がせていた人さらいで、年頃の娘たちを捕まえて、売りさばいてんのか自分たちで商売道具に使っているのかは分からねえが、とにかくこれ以上被害をださねぇためにも早々に捕まえる必要があったんでィ」
飄々と言葉を続ける、沖田。
「もう少し泳がせて、発信器で追ってグループごと一網打尽にするほうがいいってオレは提言したのに、近藤さんがあぶねえって反対するもんだから、あとは尋問で見つけ出すしかねえなァ」
……ひどい。本当に、怖かったのに。
「届けものは……?」
「んなもんねえよ」
じゃあ、あれは別に大事なものでもなんでもなかったんだ。地図のルートも、目をつけられそうな場所を選んで描かれていて……