• テキストサイズ

紗希物語【銀魂】

第2章 デートのしかた


 背中から、強い力で体を締めつけられた。口元に布のようなものを当てられきつく縛られる。視界が奪われ、手足が締め付けられる。突き飛ばされた。肘と腰を強く打つ。倒れた場所はさっさまで歩いていた土の感触じゃない。手首が締めつけられ、上に引っぱりあげられる。
 
 痛い。

 体が浮いて運ばれている感覚。締めつけられた手首がじんじん痛み、足も拘束されていて身動きがとれない。助けを呼ぼうとしても、噛まされた布のせいでくぐもった声しかでない。
 
 これは誘拐……?!
 
 驚くほど手際がよかった。びっくりして、危機感が生まれたときにはもう拘束されていた。駕籠か何かに押し込められて運ばれているらしかった。
 
 ゆさゆさと、規則正しく揺れ、止まる気配もなくどんどん進んでいく。
 
 逃げようにも、後ろ手にきつく縛った縄が天井か梁に固定されているようで、軽く吊られたようになっていて逃げられない。縄が肌に食い込んで痛い。手を抜こうと試みても、もがくほどきつくなっていくよう。真っ暗な視界の中、どうすることもできずに嫌な想像が広がっていく。
 
 花梨ちゃんが言っていた事件ってこれ? わたしもどこかに売られるの? 違う犯人だったとしても、どうなるの? どうするつもりなんだろう。もし、わたしが真選組で奉公しているって知られていたら、人質にして真選組に何かを要求するなんてことになったら……。

 売りに出された方がマシだ。何かされる方がマシだ。真選組に、由紀さんに迷惑をかけるわけには絶対にいかない。なんとかして、なにをしてでも逃げなくちゃ。
 
 縄から腕を抜こうと、思い切り力を込めてみる。痛い。抜けない。縄が緩む気配もない。逃げられない。
 
 せっかく沖田さんに仕事をもらえたのに、地図まで描いてもらって気をまわしてもらったのに。お遣いひとつできないなんて。
 
 預かった品も、捕まった時に落としたのか、奪われたのか、分からない。
 
 ゆらゆら揺れて、どんどん運ばれていく。
 
 どうしよう。どこに連れて行かれるんだろう。なにをされるんだろう。どうなるんだろう。怖いよ――。

「はーい。ストップストップー」

 外から、聞き覚えのある声。

 この声……沖田さん?
/ 60ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp