第2章 デートのしかた
動きまわると、夜また熱が上がりそうだけど、沖田の頼みを無碍にすると後が面倒そうなので、花梨が出かけた後、仕度をして部屋へ行った。
「手伝ってほしいことってなんです?」
ほいっと差し出されたのは風呂敷包み。紫色のそれはそれほど大きくない、片腕にひと抱えといったサイズの代物だ。
「こいつを届けてきてくれねーか。ここに書いてある住所まで」
小さなメモまで渡される。
頼みたいことというのはお遣いらしい。
「最近忙しくて、手が空く奴がいないんでねィ。代わりに行ってくれるとオレ達も助かる上に、女のアンタの方が都合がいい」
お遣い先は男性に対して人見知りでもするのだろうか。
屯所に越して来てまだ片手に数えるほどしか外出していないから、こんな、住所をポンと渡されたくらいじゃ場所なんてわからない。
「あの、簡単な地図とかあれば、助かるんですけど……」
面倒がられると思ったのに、沖田は丁寧に地図を描いてくれた。
「そんなに遠くじゃねえよ。危ねぇから、この道とこの道はいくんじゃねえぜィ」
描いた道に×印をつける。
「少し遠回りかもしれねえけど、ここなら独り歩きしても心配いらねえ。昼間だしな。声かけられてのこのこついて行くような真似はするんじゃねえぜィ」
沖田さんなのに。
なんかちょっと優しく感じる。
「いってきまーす」
仕度をし、風呂敷包みを片腕に抱えて直ぐに出かけた。
屯所を出て、まずは……
地図に書かれた道筋はすごいぐねぐね。まっすぐ進めばすぐに通りに出られるのに、左に行ってくねくねと細い道をまわってから円を描いて戻ってくるような経路。
これ普通に見廻りの時にでも誰かが届けにいったほうが早いんじゃないかな……。
大通りとは違う、細い道へ入って行く。屯所から離れ、進んで行くにつれ、貧しい、廃れた長屋が並ぶ人気のない通りになって行く。街からは離れていっているみたい。
地図に描かれた届け先は、もうすぐそこだ。
「ちょっと、ちょっと、お嬢さん」
呼びとめられた。男の人のその声に、振り返ろうとしたその瞬間。