第1章 彼や彼との出会いかた
テーブルへ戻ってくると、なんとなく、向かいではなく、となり同士で座ってしまった。触れようと思えば、いつでも触れることのできる位置にいる。しかも、ふたりきり。
大きな瞳がぱちっと見つめてくると、誘われているような気さえしてくる。
つーか、実は誘ってんじゃね……?
「紗希、おまえさ……」
「はい?」
紗希……。優しそうだし、ちょっとくらい、いたずらしたって許してくれそうじゃね? ごまかせそうじゃねえ? 由紀もいいって言ってたしな。
銀時は、フォークを握ったままの紗希の手を掴み、スファーに押し付ける。
「銀さん?」
ふわっといい香りがする。フローラル系の柔軟剤のにおいだろうか。それともシャンプーの香りか。
両手を頭の上で押さえ、逃げられないように顎をつかむ。
やわらかいほっぺ。
ピンク色のくちびる。
戸惑っているのか、その瞳は不思議そうにオレを見つめている。こんな状況なのに呑気なもんだ。これらなにされるのか、分かっていないらしい。
半開きになったくちびる。
……美味そう。
『おまえに嫁がせたい娘がいる』
由紀の言葉が反芻する。嫁がせたい、か……。縛られるのはごめんだがこの娘を好きにできるは、いいな。
「あの……」
食べようとしたピンク色の唇が、言葉を発した。紗希が困っていた。
この唇を食べてしまうことは簡単だ。お膳立てされた、絶品のスイーツ。着物をめくっていき、やわらかい肌を堪能することも容易い。だが……。
銀時は紗希から手を離した。
だめだ。手を出したらだめだ。
一気にひんむいて、がんがんハメたい。
きっとそれほど怒りはしない。
でも、泣きはするかもしれない。
「食ったら、送ってってやんよ。つーかおめえ、どこらへんに住んでんだ?」
「真選組だよ」
「うっ……は?」
口に入れた苺を、喉に詰まらせるところだった。
「由紀さんから聞いてないの? 真選組で働くことになって、それで江戸にきたんだよ」