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紗希物語【銀魂】

第1章 彼や彼との出会いかた


 暇だなー。ホント。仕事もねえし。

 寺門通親衛隊の会合を開くとか言う新八たちとは別れて、銀時も次の駅で降りた。歌舞伎町。

 定休日だけど、仕事の依頼はいつくるか分からないし、万事屋に戻ろうか。それともパチンコでも行っちゃおうか。

 改札を出て、どっちに行こうかと立ち止まって考えていると、少し先、流れて行く人ごみの向こうに、立ち止まっている女が目に留まった。

「あいつァ……さっきの」

 つい今し方、痴漢にあっていた子。ふんわりとしたかわいらしい雰囲気を漂わせる娘。思わず目を惹く、きれいな子だった。少しおどおどして、控えめそうな、おとなしそうな雰囲気もあるし、ターゲットになるのも頷ける。

 掲示板横の周辺地図を熱心に眺めている。迷っているのだろうか。

「よぉ。だいじょぶか」

 声を掛けると、大きな瞳がこちらを見上げてきた。琥珀色のきれいな瞳。人形のようにととのったかわいらしい顔つきには、あどけなさが残っている。思っていたより子供なのかもしれない。身なりがきちんとしているせいで大人びて見える。

「あ……さっきは、あの、ありがとうございました。お礼も言えないまま」

 車内ではかなり動揺していたようだったけれど、もうだいぶ落ち着いたらしい。

「ああいう時って声あげられないもん? 助けて、とか、やめて、とか」
「あー……びっくりしちゃって」

 困ったように笑う、少女。

 びっくりしたというよりは、怯えていたように見えたけど。
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