第35章 『錬金術』 3
先に口を開いたのは俺。先ほどの話を無理やり蒸し返す。
「俺は嫌だ。」
「え?」
「お前がいなくなるなんて考えられん。」
そんなセリフ絶対に言えないと思ってた。
二択を迫られているビーネに、今言わないでいつ言うんだ。と俺の心が俺を殴った。
「エド…。」
ほんの小さな声で俺の名前を呼ぶ。
「真理がどうとか、扉がどうとか、それも大事なことかもしれない。でもな、今、お前と関わってる人の事考えたか?グレイシアさんもエリシアちゃんもそうだ、アルやウィンリィ、ばっちゃん。大佐に中尉…みんなだ。」
ビーネの方を見れば、奴もこちらを見ていた。
綺麗な空色の瞳。
「俺と…俺と。」
一緒に生きてくれないか?
その一言がなかなか出てこない。
こいつの事を知り過ぎていて、言いだせない。