第35章 『錬金術』 3
「エドワード。僕…。」
「駄目だ!死ぬなんて駄目だ!俺は、お前と一緒にいたいっ。ビーネが好きだから。」
ビーネの事を考えて?何大人ぶったことしてんだ俺は。
ちゃんと伝えないと。
関を切ったように、俺の我儘が溢れだす。
「等価交換だっ!お前の一生俺に寄こせ、俺の一生お前にやる。だから!お前が死ねば俺も死ぬ。だから、死ぬなんて言うな!」
いつの間にかビーネを抱きしめていた。
ぎゅう。と思い切り強く。
「バカ。エドワードのバカ!僕もエドワードの事が好きだよ。こんなに誰かを好きになったの初めてだ。そんな事言われたら、死ねないじゃないか!」
うぅ!と唸るビーネ。じんわりと肩が濡れていく感覚にビーネが泣いているんだと理解した。
「みんな大好きだ。でも…でもっ!」
「俺も背負う。一人で背負うな。アルもいる。みんないる。だから生きろ。」
中佐がそうしたように、次は俺がビーネの天秤を支えよう。
「生きたい!生きたいよぅ…うぅう…うわぁあん!」
俺にしがみ付いて、子供のように大声で泣きじゃくるビーネ。
その声を心配して、家の中から全員飛び出してきた。
エリシアちゃんは兄が泣いているのに驚いて、一緒に泣きだしちまうし、アルフォンスも釣られて泣きだす始末。
ウィンリィとばっちゃんは何が何だか、と驚くばかり。
「エド、一体何したのよ。」
「許してやったんだ。」
「許した?」
「あぁ。」
燦々と降り注ぐ太陽が俺たちを温める。
荒れ野に雨が降るように、延々と留まらない涙。
いつか、この雨が花を咲かせる雨になればいいな。
ビーネの頬から落ちる涙の雫が、太陽の光を受けて七色に輝くのが見えた。
・・・