第35章 『錬金術』 3
「だから答えは僕が出さなきゃならないんだ。」
決意したように。でも、誰かに否定してもらいたいように、苦しそうにそう言った。
そして、一つ息をして表情を変えた。
「で。いきなりで悪いんだけど。」
一気に先ほどまでの重たい空気を無かったことにしたビーネが、鞄から紙を色々引っ張りだしてくる。
「これが、国家錬金術師の権利剥奪の書類。それから、軍人を辞任するかしないかの紙、こっちが新しくできる研究所への就職志望書ね。」
はいはいはい。と俺には三枚。アルフォンスには最後の一枚が渡される。
何事か!と聞く暇もなくその場でペンを渡され、指示を受けながら書類にサインをさせられていく。
「ちょっと、ビーネ?」
「お前、なんなんだよ!」
「こっちも重要なんだよ。実はこっちが本命。」
さぁさぁ!と急かされ、仕方なく、頭を目の前の書類の事に切り替えさせられた。
まぁ、俺はもう錬金術が使えないから『国家錬金術師』ではなくなるし、アルフォンスの身体を取り戻す事が出来たから軍人である事も必要ない。
「ビーネ、この『錬金術研究所』って?」
アルが紙をひらひらさせながら彼に聞いた。
「新しくできる研究所。半分軍で半分民間の錬金術を研究する施設。あとの主な仕事は錬金術師の監視だ。」
真剣な顔でそう言い切るビーネ。
今回の事のように、また不意にホムンクルスが生まれてしまう事が無いとは言い切れない。
「まぁ、まだまだ紙面上での構想だし、今回の事のような事が起きないようにしたいなと思っているだけなんだ。だから、エドワード、アルフォンス。僕に力を貸してくれないか?」
もちろん二つ返事だった。
錬金術の研究もするという事だったので俺たちにとっては願ったりかなったりだった。
「じゃあボク、二人にこの事伝えて来るよ。中央に行くことになるって。」
アルは逃げるようにこの場を離れて行った。
しばらく沈黙が降りる。