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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第35章 『錬金術』   3



奴は穏やかな優しい顔で今にも泣きそうなアルを見つめていた。

「ビーネ。俺とおまえとじゃ決定的に違う事がある。「錬金術」という物にどれだけ信頼されていたか、だ。」

ビーネは教えを乞うような顔で俺を振り返った。

「ジプシーはこの世界のあらゆる「錬金術」や「錬丹術」を知り尽くしている。なのに、お前は「人体錬成」という禁忌を犯した。だから真理は罰として、お前の身体を奪って、懲りもせずもう一度「人体錬成」をしたお前から大切な仲間を奪って行った。」

アルフォンスが俯いてしまった。
アルだって錬金術師だ、一緒にジプシーの事を調べて、どれだけ彼らが錬金術に精通していたのか、俺たちは悔しいほどに知ってしまっている。

「お前の罪は仲間を自分の身体に使った事じゃない。それもあるかもしれないが、それ以上に、ビーネ・ジプシーが「錬金術」を裏切ったことにあるんじゃないかと俺は思う。きっと、ビーネは俺がやったように「真理の扉」を使って、仲間を取り戻す事は出来ないんじゃないか?」

これは俺の勝手な想像だ。
ビーネの使う錬金術は、何となく等価交換以上の力が発揮されている気がしていた。

「よく。わかったね。うんそう。僕らの「真理の扉」は僕ら自身だ。僕の脳みそが「真理の扉」と言っても過言じゃない。取り出せばそれが扉。だから、僕たちは馬鹿みたいな威力の錬金術が使える。先祖が見つけた世界の真理と一体になる錬金術のおかげだね。」

それはそれで物凄い事だ。でも、真理はどう思うだろうか。

「「真理」は自分から扉を奪っていったジプシーが許せないと思うよ。だから僕らは自分の「真理の扉」を「錬金術」を犠牲にして何かを得る事は出来ない。」

天才だと言われる俺たち錬金術師がこいつらの前じゃ霞む。
生まれた時から、真理の扉を理解していて、陣なし錬成が出来るような状況なんだから。

「わかってる。僕は真理に命を差し出して、仲間を取り戻すか。真理から恨まれながら、罪を背負って生きていくしかない。」

死か生か。
ずっとビーネはその天秤の上でふらふらと揺れていたんだ。
ここまで死へ傾かなかったのは本当にヒューズ中佐たちのおかげなんだ。



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