第35章 『錬金術』 3
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アルフォンスと一緒にリゼンブールに戻ってきて早3ヶ月が経とうとしていた。
ようやく屋根の修繕が終わった時、丘の向こうから人影が二つこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。
一人は子供でもう一人は男のようだった。
屋根を降り、その二人の到着を外で待つ。
段々と近づいてくる人影が誰だかわかった時、俺の心臓が今までにないくらいドクンと跳ねた。
「こんにちは!」
「久しぶり。」
俺に向かって無邪気な笑顔を向けて来る女の子。
そう言って片手を上げて優しく微笑む男。
「ビーネ!エリシアちゃん!」
元気そうだな、今何してるんだ、中央はどうなってる、なにしに来たんだ。
色々な言葉が合い交ぜになって喉に詰まる。
俺は中に向かって、ビーネが来たぞ!としか叫ぶことしかできなかった。
「ビーネ!」
「ビーネさん!」
アルフォンスとウィンリィが競うように中から出て来て、挨拶を交わす。
エリシアちゃんはウィンリィと家に戻り、俺とアルフォンス、ビーネの三人は庭先の木陰に座りこむ。
「僕が「賢者の石」を追っていた理由。父さんを治すためだ。」
唐突にそう切り出すビーネ。
「でも、父さんは死んでしまった。」
悲しそうに笑うビーネに俺とアルは何も言えない。
「それと、エドの解き明かした人体錬成の真理によれば、僕の仲間達は取り返せる。」
そうだよね?と俺に確かめて来るビーネの目は、確かな答えを求めていた。
仲間の身体と命と引き換えに取り戻した自身の身体。
あの戦いのときに、アルフォンスが、魂と引き換えに俺の腕を真理から取り戻した時のように……。
「お前、何するつもりだ?」
まさか、死ぬつもりじゃ。
「僕は、今の僕のままでいたい。」
葛藤してるんだ。
仲間を取り戻す事はできる。でも、自分は死にたくない。
もし、仲間を真理の扉の中から引っ張り出すと、ビーネは父親を錬成した時に失った、心臓から下をもう一度失うことになる。
すなわち、死だ。