第35章 『錬金術』 3
お葬式の日、エリシアはみたことないぐらいギャンギャンと泣いていた。
こちらが悲しんでいる暇がないくらいに手を焼いた。
僕と母さんが順番に彼女の面倒を見て、順番に参列しなければならないくらいに。
元監査司令部の人たちも葬儀に来てくれたが、ろくに挨拶もできなかった。
エドワードやまだ車いすに乗ったアルフォンスも苦笑い。
ロイやリザさん、それからファルマンさんやブレダさん、フュリーさんは口々に僕が一度死んだ事を物凄く怒って行った。
ようやくエリシアが泣き疲れて僕に抱かれながら眠ったのは葬儀の帰り道だった。
「なんだか父さんとお別れしたような気分じゃ無かったよ。」
「うふふ。そうねぇ、忙しなかったわね。」
「まぁ、ヒューズ家らしくて良かったと僕は思う。」
葬式だったというのに僕らは笑顔だった。
家に帰っても僕と母さんは父さんの思い出話で笑いあえた。
「あなたこれからどうするの?」
漠然とした質問。
心配してくれているんだ。
「中央の復興も終わってないし、街の方も中途半端。次の大総統の就任も後回しにしているし、何より国家錬金術師がどうなるか…。」
「私は詳しくはわからないし、きっと教えてもらえるものじゃないでしょ?」
「うん…さすがに今回の事はちょっと…。」
「でも、軍がひっくりかえるような事が起こったんだもの。ビーネやマスタングさんがしっかりしないといけないのは、母さんでもわかるわ。」
だてに軍人の妻と母をやっている人ではない。
心配そうにする反面、連日ラジオや新聞で報道されることをうのみにしている訳ではなかった。
「だから、軍人を止めなさいとは言わないわ。きっとあなたも父さんに似て放っておけない性格だろうから、精一杯あなたのできる事をやりなさい。」
本当は危ない事しないでほしいけれど。と困ったように笑う母さんは強い。
「大黒柱が勝手にどっか行っちゃったし、僕も怠けていられなくなっちゃったなぁ。」
「勝手な人ねその人。」
「だね。」
僕はこの日を境に、軍に缶詰めになることになった。
エリシアから時折送られてくる、かんばって!と書かれた手紙が唯一の励みだった。