第34章 『錬金術』 2
「エドワード!アルフォンスはいいのか?」
「救護の人が見ててくれてる。ビーネは、ヒューズ中佐のとこか?」
「うん。いつまでも独りぼっちは寂しいからね。」
ゆっくりと大穴に向かって歩いて行く。
途切れた会話に少し耐えられなくて、僕はエドワードに「エドは?」と話を振った。
「俺は、セリムを迎えに。」
「セリム?生きているのか?」
「あぁ。ほら、エンヴィーが人間の姿から小さな姿になっただろ?」
賢者の石が残り少なくなった時、人間の体を保てなくなり、本来のホムンクルスの醜い姿になっていた事を思いだした。
「生かしたんだ。」
「まぁな……。」
穴の縁まで来ると、錬金術を使って全員が降りられるようにはからった。
底に到着すると僕はエドワードを置いて、4人のブリッグズ兵とともに奥を目指した。
ここ、こんなに近かったっけ?
父さんの眠る広場まで行くのにそう時間はかからなかった。
「彼、ですね?」
「はい。おねがいします。」
4人は機械的に父さんの遺体の上に布をかけ、横で担架を広げる。
1・2の3!と声を掛け合って、安らかな表情をして眠る父さんを担架へ移動させる。
もう、血が乾きはじめている。
そんなに一人にさせちゃったかな、ごめんね。
「先に行っていますね。」
「…はい。」
父さんを運んでくれる4人は、先ほど上から降りて来た地点を目指して歩いて行った。