第34章 『錬金術』 2
エドワードが陣に飲まれてほんの数分だったのだろう。
体感では何時間の経過したように感じられた。
バヂバヂバヂ!!と一際大きな錬成音を立てて、意識の無い人間のアルフォンスを支えたエドワードが戻ってきた。
「アルフォンス!」
誰がそう言ったのか分からない。
ヴァンさんかもしれないし、イズミさんだったかもしれない。
「キャー!」
と言って目を覆ったのはメイとランファン。
リザさんは苦笑いで視線を逸らしているだけ。
「誰か、布を!」
そう叫べば、慌しく走っていたブリッグズの兵が一人、大きな黒い布を持ってきてくれ事なきを得た。
これでアルフォンスの恥はさらされずに済んだ。
「どうなった?」
「アルが、戻った。でも、意識はまだ戻らないけど。」
「どうやって…。」
ロイが少し急くように僕にそう聞いた。
それは僕も疑問だった。
「俺の、真理の扉を使ったんだ。これで俺はもう錬金術は使えない。」
「エドワード……!」
ヴァンさんはよくやった。と言わんばかりに笑顔。
イズミさんやアームストロング少佐は驚いた顔をしていた。
錬金術をまったく齧っていない人たちはなんのこっちゃ。と首をかしげていた。
「良かった!では我々は少し休ませてもらおう。やらねばならない事が山積みだ。」
そう言ったのはロイ。
きっとリザさんの事を思って言ったのだろう。
僕も一緒に退席を申し出て、やっぱり無理をして立っていたリザさんとロイの二人を支えながら医務室へ向かった。
「じゃぁ、二人とも安静にしていてね。」
「ハニー。一人で大丈夫か。」
「もう、襲われる事は無いだろうから。ゆっくり父さんを迎えに行くよ。」
「…引き上げるのには人手がいるだろう。」
まさか!
この僕が父さんと心中するなんて考えているのか!
かわいいかわいいエリシアを残して逝くなんて考えられない!!
「そうだね。何人か借りて行かなきゃね!」
仮設のテントを後にして、誰もが忙しそうにしていたけれど4人ほどブリッグズ兵を捕まえて地下へ向かう。
「おーい!」
誰かが僕を呼びとめる声がして振り返る。
すると、上半身に包帯をぐるぐる巻いたエドワードが手を振りながらこちらに走ってくるところだった。