第34章 『錬金術』 2
「アルフォンス・エルリック…なんとかならんのですか!?」
そう言って、僕とロイの方へ視線をよこしてきたのはアームストロング少佐。
彼だってなんといっても錬金術師、賢者の石を使わずに人体錬成を成功させるのがいかに無謀な事かぐらい分かっている。
それでも、縋りたいと…。
「人体錬成には、真理の扉を開けるための「通行料」がいる。エドワードはアルフォンスの魂と交換に「通行料」として右腕を払っている。」
「うむ……人間ひとり分を引っ張りだすとなると…」
僕の言葉に続いてロイが付け加える。
「エドワード君は自信を犠牲に……」
ロイを支えるリザさんが、まさか。と言った風に聞く。
「いや。あいつは一人残される恐怖と絶望を知っている。それをアルフォンスに味あわせる事はしない。」
ロイがその質問に強い確信をもってそう答えた。
一人残される恐怖。
その気持ちはよくわかる。
うつむいてしまった僕を、探るように伸びて来たロイの手が僕の肩を強く抱いた。
「エドワード。」
ヴァンさんだ。
イズミさんに肩を支えられている。
「俺の命を使って…アルフォンスを取り戻せ。ちょうど「ひとり分」残ってる。」
ひとり分……。
ヴァンさんの命の分という意味だろうか。
「バカ野郎…そんな事できる訳ないだろ!俺達兄弟が身体を無くしたのは俺達のせいだ!アルを取り戻すのに人の命は使わねぇって、さんざん言ってるだろうが!!」
それが、二人の罪の償い。
「だいたいなんでてめぇが命を懸ける必要がある!!」
「父親だからだよ。必要とか理屈じゃないんだ。お前達がなにより大事なんだ。幸せになってほしいんだ。」
エドとアルの父親だから…。
「二人ぼっちになって寂しくなってトリシャを蘇らせようとした。おまえ達の身体がそうなってしまったのは放ったからかしにしてた俺のせいでもある。」
どれだけ離れていても父親は父親で、子供は子供。
「すまなかった。俺はもう十分生きた。最後くらい父親らしい事をさせてくれ。」