第34章 『錬金術』 2
なんだかふわふわ浮いて気持ちがいい。
ここは夢の中だろうか。
ん?あれは父さんと母さん、エリシアも。
待って!僕も行くよ!
「…ビーネ、おい!ビーネ!!」
誰?僕を呼ぶのは。
「しっかりしろ。」
エドワード?
「そうだ、エドワードだ。」
僕は……!
「どうなった!」
「うわっ!突然起きるな!落ちる!」
ぐい。と上半身を起こすと、そこはエドワードの腕の中で、お姫様だっこをされていた。
全身は痛むし、恥ずかしさより何より、エドワードが無事で周りの空気が幾分か穏やかな事にホッとした。
「終わったよ。」
「そっか。」
「ただ……」
それきり口を閉じてしまったエドワード。
降ろしてくれ。と頼み、エドワードと並んで歩きだす。
視線の先にはアルフォンス。
一体何が?
そう言えば、エドワードの腕が戻ってきている……そうか…アルフォンスが腕を……。
「なんだ、どうなった?勝ったのか?」
「はい、でも。アルフォンス君があちらから戻ってきていません。」
ロイもリザさんも無事だ。
僕はエドワードの元を離れ、二人の側へ寄る。
「ロイ、リザさん。二人とも無事で良かった。」
「ハニー。君も無事で何より。」
エドワードはアルフォンスの元にたどり着くと、アルの横で膝をついてしまった。
アルが生きていないのであれば彼らにとってこれは勝利とは言えないのかもしれない。
「ごめ……なさイ、ごめんなさイ…」
アルフォンスの横でぼろぼろと涙を流すメイ。
きっと彼女がアルフォンスの錬成を手助けしたのだろう。
「おまえのせいじゃない、アルの判断だ。」
「エド!「通行料」ならあル!使エ!賢者の石ダ!これでアルを取り戻セ!」
リンが賢者の石が入った小瓶をエドに向かって差し出す。
いつの間にかグリードがリンに戻っている。
あはは、良かった。
「………ダメだ。俺達の身体を取り戻すのに、賢者の石は使わないとアルと約束した…!」
うん。そうだ。
二人ならそうする。