第33章 『錬金術』
もうもうと立ち込める砂埃、引っ張られた左腕にはビーネの掌の感覚は無く、鈍い痛みが走っている。
ビーネは?グリードは?みんなは?
段々と晴れる砂埃の向こうに髪を纏めていたゴムが切れ、俺より色が薄くて長い金髪が地面に広がっているのが見えた。
バカヤロ、俺を庇ったのか……。
「石…賢者の石…」
呻きのようなホムンクルスの言葉。
俺に向かって来る。
ヤバい、逃げなければ!
ぐっ。と立ち上がろうとするが、腕に痛みが走りそこに張り付けにされているかのように動けない。
視線を動かせば、俺の腕は背にあるコンクリから伸びる、細い鉄骨に突き刺さっている。
「逃げろエドワード…!」
「兄さん…逃げて…」
ホーエンハイムやアルフォンスの声が聞こえる。
逃げなければ!動け!動け!
「ぐお、お、おお!」
動けば動くほどに鉄骨が筋肉を抉り、腕に、全身に力が入らなくなる。
痛い。
いたい。
まずい!
「石…人間…エネルギー、よこ、せ」
「エドワード!!」
ホーエンハイムの叫びにもうだめかと腹をくくりかけた。
ドカカカ!と、俺の顔すれすれに飛んできたメイの短剣。
飛んできた方へ視線を向けると、アルフォンスとメイ。
すると、もうほとんど動けないアルフォンスがその両腕を上へと持ち上げる。
「何をする気だアル…」
兄弟だからわかる。
なにをしようとしているのか。
「おいやめろ…アル…おい…」
「勝てよ、兄さん。」