第33章 『錬金術』
冷え切ってるじゃないか!と声を荒げようとしたがビーネの声に遮られた。
「待て!グリード!」
ビーネは休むことなく立ち上がり、今にも敵に向かって行きそうなグリードへ走り出す。
俺は慌てて追いかけた。
「何するつもり?」
「はっ。親父殿は賢者の石が欲しいんだろ?オレはその賢者の石を持ってる。」
「どういう事だ?」
ビーネの攻撃に続け!と言わんばかりに、兵士や錬金術師による攻撃がまた始まる。
ボンッ!ドガァァ!と鳴り響く効果音をBGMに俺たちは突破口を見つける。
「じゃぁ、グリードの賢者の石を狙って防御を解いた隙に。」
「俺とビーネがあいつを殴る。」
「そう言うこった。上手くやれよ!」
ホムンクルスに向かって走り出すグリードを見送って、俺とビーネはグリードとは反対側から近づく。
「エド、大丈夫か?」
「大丈夫に決まってんだろ!」
「そうか。」
頬を血や泥で汚しながら、俺の方を見てへにゃりと笑うビーネ。
不覚にもドキリとして目を逸らしてしまった。
グリードの読み通り、ホムンクルスは防御を解いてグリードの賢者の石を取りこもうとした。
「今だ!」
勢いよく飛び出して俺は機械鎧の右手を、ビーネは短剣をその場から投げる。
う…おっ…ノーモーション錬成なんて反則くせぇ!
不意打ちにも対応しやがるっ!
先ほどと同じように防御を張られ、バチバチバチ!と激しい錬成音とともに防がれる。
保ってくれよ俺の腕!
俺の願いもむなしく、機械鎧の腕は根元からバラバラになってしまった。
くそっ!ダメか…
「行け!エド!」
ビーネの声に後押しされ、弾き飛ばされた体制から泣きの一発をお見舞いする。
あきらめるな!!
ガンッ!と振るった足は、ホムンクルスの腕に防御された。
「素手で…防御した…奴の限界だ!あいつはもう神とやらを押さえ込んでいられないっ!!」
「う…う、ヴ……おおおぉぉおおぉおぉおおお!」
ホーエンハイムの声に反発するかのように、ホムンクルスが叫び出す。
苦しそうにうめき、地に両手をつく。
「離れろエド!」
ビーネに腕を引かれた瞬間、ホムンクルスを中心に物凄い衝撃派が俺たちを襲った。