第33章 『錬金術』
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アルフォンス……
師匠、大佐、中尉…
体中痛いはずなのに、不思議と痛みは感じない。
大佐の焔がここの空気を暑いものに変えていく。
「ビーネは…」
「あ?ビーネ・ヒューズの事か?先ほどロイ・マスタングと一緒にいるところを見たぞ!」
俺を助けてくれたブリッグズの兵士が怒鳴るようにそう教えてくれた。
ここじゃ役に立ちそうもないがな!と鼻で笑っていた。
「あいつはそんなんじゃない!」
「どんなか知らないが、死んだはずの人間がどうしてここにいるのか疑問だな。ホムンクルスかもしれない。」
あぁ、そうだった。
あいつは一度みんなの前で死んで見せたんだった。
大佐の所にいる。と、焔の出所を探し、ようやくビーネを見つける。
思ったほどボロボロにはなっていないみたいだった。
「ロイを頼む!」
ビーネはそう叫ぶと敵に向かって走り出し、氷の槍を作って攻撃していた。
案の定防がれた攻撃に奴はさらに強そうな攻撃を錬成していた。
俺も加勢しなきゃ!
「ビーネ!」
「エド!」
地下でプライドと戦った時のように横に並ぼうとした。
しかし。
「離れろ!」
ビーネは両手を合わせて、地面から間欠泉のように水を噴出させ、自らを空中へと上昇させた。
何をする気かわからなかったが、離れろと言われたので慌てて距離を取った。
上の方からパン!と手を合わせる音が聞こえ、急に天候が変わったのかと思うほどの冷気が上から襲ってきた。
「なんだ!?」
「急に寒くなったぞ!」
「は、離れろぉ!」
前線で戦っていた兵士たちが散り散りに後ろへ下がっていく。
キュァアアアアアア!と何かの鳴き声にも聞こえる甲高い音が聞こえ、上空から鳥を模した鋭い氷が、無数にホムンクルスへ向かって飛んでいく。
ホムンクルスによって砕かれる無数の氷の鳥が地の破片が俺の足元まで飛んでくる。
その氷のかけらは、可視できるほどの冷気を立ち上らせるほど冷たい。
ドサッ!と何かが落ちて来る音が聞こえ、視線を向けると不時着したビーネの姿。
「大丈夫か!?」
「平気だ。」
駆け寄ってその背に手を乗せると、ビーネの身体は先ほどの氷のかけらのように白い冷気を漂わせていた。