第33章 『錬金術』
一瞬、地上から物凄い轟音と風圧と光が降ってきた。
何かあったのだろう。
「ビーネ君、もう少し急げない?!」
「限界だよ!苦手なんだよこう言うたぐいの錬金術!」
「天才の名が廃るな。」
「うるさい。突き落とすぞ!」
先に行く!と豪語したものの、そんなに早いスピードで上れている訳ではなかった。
上りきって地上に出ると、地面は根こそぎ抉られており、振り返れば軍部が半分ほど吹き飛んでいた。
「さっきので…?」
「そのようね。」
何があったのか全容が把握できるのはこの闘いが本当に終わった時だけだ。
ブリッグズの兵達が次々にロケット砲や銃をホムンクルスに向けて撃ちこんでいる。
あれほどの攻撃を見たというのに、士気は下がることなく敵に向かって行く様子はさすが少将の部下たちだと感心してしまう。
「ロイ・マスタング大佐!」
北の兵士の中にもロイを知っている人がいるんだなぁ。と、こんな状況の中呑気な思考が僕を邪魔するようにぐるぐる回る。
「攻撃を続けてください!手を休めないで!!」
何が味方で敵なのか頭で理解できなくとも、本能が警鐘を鳴らすのだろう。
目の前のホムンクルスが今の敵であると。
「大佐!行けますか!」
「あぁ。」
リザさんがロイに的確な敵の位置と距離を伝え、ロイがその方向に焔を放つ。
「当たったか!?」
「わずか逸れました!右へ5度修正!」
長年一緒にやってきた二人だからこそ出来る芸当だ。
「目が見えんから火加減がわからん!」
「加減する必要はありません!距離50…いえ53!」
リザさんの指示に従ってロイは慣れない様子で手を合わせる。
僕はロイの焔の軌道に合わせて、空中の水分を避けていく。
「どうもこの手合わせ錬成はしっくりこんな!」