第32章 『再・再構築』 3
「しめた!なつかしいねぇ、前の俺が入ったフロじゃねぇか!」
グリードが心底楽しそうに言った視線の先には、地下に向かって掘り下げられた鍋に入ったボコボコと音を立てるマグマのような液体。
「親父殿も入って…!」
鉄骨で押し込んでやろうと思ったのだろうグリードが、それをホムンクルスの背に向けて振りかざすが虚しく消し飛ばされてしまった。
「どけ!グリード!!」
エドワードが押しこめないのなら上からかけてやろうと、両手を撃ちつけ鍋を持ちあげ、ホムンクルスに向かってひっくり返していた。
しかし、マグマはホムンクルスによって錬成され、槍と化して僕らを襲った。
一度攻撃の手が止み煙が晴れると、ホムンクルスが突然足元のマグマを使って地上へと上昇して行ってしまった。
「奴め賢者の石を調達しに行ったな!!」
ヴァンさんがホムンクルスを追って地上へと登って行ってしまった。
また、グリードも天井から垂れていた鎖を伝って上っていく。
「リンまで…ちょっと!」
「追うよ!」
「はい!」
イズミさんが慌てる僕らを叱咤する。
「ロイ!立てるか?」
「あぁ。」
「ホムンクルスが上に行ってしまった。僕らも追うよ。」
「…肝心な時に役に立たんとは…情けない!」
「ロイ…。」
立ち上がるロイに手を貸しながら、僕は彼に声をかける事が出来なかった。
「エド!」
「兄さん!」
「先に行け!こいつ、俺に用があるらしい。」
イズミさんとアルフォンスが叫んだ先で、エドワードが満身創痍のプライドの影に捕まっていた。
手助けをするべきか、エドの言葉を信じて上に行くべきか。
「にい…」
「行くよ!あいつを止めないと!負けるんじゃないよエド!」
「はいっ!」
さすがは二人の師匠だ。
イズミさんはエドワードを信じた。
アルとメイ、イズミさん。それから僕とロイ。
地下にエドワードを残したまま僕らは錬金術で上昇する。
「すまない…」
ドドドドと上昇している時に、ロイが僕の隣でぽつりとそう呟いた。
でも、僕にはどうその言葉を受け止めれば良いのか分からず、聞こえなかったふりをするしかなかった。
・・・