第32章 『再・再構築』 3
「好き放題やってくれやがったなこの野郎。クソ真理と一緒にぶっとばす!!」
スカーの錬金術のおかげで、何の制限もなく錬金術が使えるようになり、エドとアルは強くなった錬金術でこれでもかというほどに敵を襲う。
僕も手を貸さなければ。
「メイ。ロイを頼む。」
「はイ!」
メイにロイを頼み、兄弟を追って前に出て行ったイズミさんとグリードを追おうとしたが、グイ。とロイにズボンの裾を掴まれあわや転ぶところだった。
「ハニー。お前までいなくなるなよ。」
「こっちのセリフだ。」
ロイ。
「行け。」
「うん。」
ロイの強い言葉は僕の心の太い柱になる。
強くアクセルを踏まれた車のように、僕は地面を強く蹴り、もう躊躇する事なく両手を合わせ錬金術で敵を襲う。
短剣より、体術よりも身体に馴染んでいる錬金術。
心地がいい。
やっぱり僕の生きる道は錬金術師しか無いのだと痛感させられる。
「エド!」
「わっ!」
爆風に押されて飛んできたエドワードを受け止める。
「サンキュビーネ!」
「大丈夫?」
「あぁ。くっそ、こっちが強くなっても焼け石に水状態じゃねぇか!」
体制を立て直しながら、共にホムンクルスへ攻撃する。
しかし、敵は微動だにせず指一本動かすことすらせずに僕らの錬金術を相殺していく。
ボガァアアン!!と爆発が起こり、僕らは慌ててヴァンさんの防御の後ろに入りこむ。
「焼け石に水でもかまわん!ガンガン行け!!」
バチバチバチ!とヴァンさんが彼の中にある賢者の石を使って僕らを守ってくれる。
「奴の身体は今「神」とやらを抑え込むのに精一杯!少しずつでも石の力を削り取っていけば、いつか奴の身体にも限界が来る!」
「いつかっていつだよ!」
「わからん!わからんが防御はまかせろ!」
強大で途方もない敵。
覚悟を決めるためか、終わりの見えない闘いに絶望したためか、僕は深呼吸をひとつ。
イズミさんがもう一度攻撃のきっかけを作ってくれた。
僕らもそれに続く。
バラバラと落ちてきた巨大な歯車や鎖がホムンクルスの錬金術で僕らの方へと飛んでくる。
間一髪でそれらを避けると、足元にあった大きな蓋のような物が開いた。