第32章 『再・再構築』 3
「くぅっ…!」
メイ…錬丹術。
錬金術はホムンクルスの手によって封じられている。
まてよ?
確かに僕の手合わせ錬金はこの国で培った錬金術の知識が元だ。
しかし、この錬成陣は……
ポケットに手突っ込むと束になった錬成陣の書いた紙を取り出す。
もしかしたらこれなら。
「ビーネさン!?」
一瞬メイの気が僕にそれ、その隙でメイの短剣が外れてしまった。
「しまっタ!!!」
「たのむ!発動してくれっ!!」
紙束に両手を乗せ祈るように力を込めた。
メイの防御の陣と入れ替わるように、慣れた錬成音をうならせてエネルギー派や竜巻の風圧から僕らを守る水の壁が出来上がった。
しかし、たかが水。
弾き飛ばされてはまた集まってを繰り返させるしかない。
「すごイ…」
「やるじゃねぇかビーネ!」
「でも、時間の問題だ。紙が尽きたらっ!」
バチバチバチ!と発される錬成音に喰われるように手元に積み上がっている紙たちは、一枚一枚ちりじりになっていく。
「まだか……まだなのかスカー!」
僕らの頼みの綱はスカー。
彼の兄が研究した、この国の錬金術の違和感。
そして、その違和感を払拭するための錬成陣。
錬金術は地殻エネルギーを使い発動する。
錬金術を使う地上にいる僕らと地殻エネルギーの間に力の流れを妨げる物がある…賢者の石だ。
今、スカーに託された錬金術はこの間にある賢者の石を一手に吹き飛ばす物だそうだ。
「まずい、そろそろ尽きる!!」
僕の錬成陣は残り数十枚。
スカー…スカー!
その時、ズン。と身体に感じた揺れ。
「来たっ!!!」
ヴァンさんの声を合図にエドワードとアルフォンスが錬金術を発動させ、ホムンクルスを襲う。
水の防護膜を張る必要はなくなった。
錬成を辞め、チリチリと痛む掌を見て見れば皮膚が焼けただれていた。
「ざまぁみやがれ。えらっそーにふんぞり返ってた椅子が粉々だ。」
狼煙は再び立ちのぼる。