第32章 『再・再構築』 3
フラスコの中の小人…ホムンクルスに取り込まれたアメストリス国民の魂たちは、肉体に呼応するようにホムンクルスの身体から離れようとする。
やがて自らの肉体に引きつけられる魂たちを押さえきれなくなったホムンクルス。
魂は勢いよくホムンクルスを飛び出して行った。
「アメストリスの人々の魂はそれぞれの身体へと帰った。元々持っていたクセルクセス人の魂だけではそのとてつもない『神』とやらを抑え込んでいられまい。」
ホムンクルスの手に握られていた疑似太陽は収められ、僕らを、ヴァンさんを、襲っていたエネルギー派も消えた。
ヴァンさんの手は焦げて真っ黒だ。
メイも肩で息をしている。
「はっは…どうだ!」
その場に座り込んでアルに背を支えられているヴァンさんが笑う。
「今は『神』とやらをその身体の内に保ち続けるだけで精いっぱいなのではないか?」
イスの肘かけを壊れるほどに握りしめ、全身を強張らせるほど力を込めているホムンクルス。
「……資源はまだまだいくらでもある。また賢者の石を作れば良いだけの事だ。一億でも十億でも、人間というエネルギーはこの地上に存在するのだから。」
僕らの上げた狼煙を吹き消すように、ゴォオオオッ!とまたも頭上から物凄い轟音とともに風が吹き下りてきた。
「竜巻!?」
上に気を取られているとメイが、正面!と叫ぶ。
ホムンクルスがまたエネルギーをぶつけて来て、ヴァンさんがそれを防ぐ。
不意をつかれ押されるヴァンさん。
くわえて上からの風圧で足を踏ん張れない。
「踏ん張って下さいおじさマ!防御の陣が壊れル!!」
僕にはヴァンさんを手助けする事も、メイを手伝う事もできない。
ヴァンさんは押され、メイの防御の陣へとそのエネルギー派が迫る。
「父さん頑張って!!」
「てめぇこの野郎!気ぃ抜くんじゃねぇ!!」
エドとアルだ。
ズルズルと押し返される父親の背を支える。
「まいったねこりゃ…ボンクラ親父だけど…いいとこ見せたくなっちまうなぁ!」
わずかながらもち返すヴァンさん。
しかし、防御の陣のためのメイの短剣はカタカタと震え今にも抜けそうだ。