第32章 『再・再構築』 3
まだだ。
反撃の時はもう少し先。
来たるべき時に、僕らはしっかりとあたえられた役目を果たす事が出来るのだろうか。
「アメストリス国民を賢者の石にして…神を抑え込むのに使っている…ですっテ?」
この国の人口は約5000万人。
他国との比較として出される総人口とすればそんなに違和感も抱かないだろう数字。
しかし、たった一人のホムンクルスが5000万人分の命を手にしているというのは、僕には理解しがたい途方もない数字。
「ご苦労人柱諸君。お前たちの役目は終わった。もう錬金術を使う事も扉を開ける事もしなくてよろしい。」
チリチリと感じるこの感覚は僕への警報に聞こえる。
……偉っそうに!
しかし、偉そうにするだけの事はあるだろう。
『お父様』はまるで王座にでも腰掛けているかのように、イスに身を預け、こちらを見下している。
「…みんな、俺の側に来い。」
ヴァンさんがそう指示を出す。
僕は目の見えないロイを抱き、いそいそとヴァンさんの側へ寄る。
その時、ホムンクルス・お父様が、トン。と軽く指で肘かけを叩く。
ぶわり。と奴を中心に衝撃波が走り僕らを襲った。
エドワードが抵抗を試みようと両手を合わせたが、錬金術は発動しなかった。
錬金術を封じたんだ!
「くそ!錬成できない!!」
「さらばだ人柱諸君。」
人柱、人柱と!
まるで僕らをただの道具としてしか見てないような口ぶり。
すぅっと上げられたホムンクルスの右手、突然エネルギーの球体を作りだし、そこから放たれたエネルギーが僕ら全員の頭上に迫った。
ズン!!!と物凄い衝撃。
思わずロイの背中を守るように丸まってしまった。
「全員俺の側を離れるなよ!」
覚悟していた痛みは来なかった。
ヴァンさんの声が聞こえ顔を上げると、彼が頭上のエネルギー派を喰い止めていた。