第31章 『再・再構築』 2
「確かに僕ら人間には『欲求』がある。欲しいと思った物に手を伸ばしてしまう。どんな手を使ってでも…。それは、あんたにもあるんじゃないのか?」
禁忌と言われている術(すべ)に手を伸ばしてでも。
「七大欲求。セリム……プライドやグリード、ラース……。だから、そんな名前を付けたんじゃないのか?」
「……腹の中のコイツにもいったが。私は人間になりたいのではない。完全な存在になりたいのだ。」
七つの大罪と言われる罪をすべて清算して、完全な存在になる。
十分『欲』に染まってるじゃないか!
「…目玉まみれさン。不老不死なのですよネ?」
メイが僕の横まで歩いてくる。
「否定しませんカ…みなさん。あれは私が貰いまス。」
「え?」
「お二人には小さいほうのホムンクルスをお任せしまス。」
「小さい方ったって…あれも十分やべーんだぞ。」
僕は直接セリムと戦った訳ではないが、ヴァンさんがセリムを倒さずに閉じ込めたくらいだ。何となくヤバいのはわかる。
と、エドワードが何かに気が付いたようにロイを振り返った。
「強制的に扉を開けた、だと?」
ん?
「気付いたか鋼の。私を錬成に巻き込んだ時、奴『この手は使いたくなかったが仕方がない』と言った。」
「……奴らにとってハイリスク……って事か。」
ホムンクルス。
ほとんど不老不死の彼らが『ハイリスク』というのだ。
僕はエドワードへ視線を送り、頷く。
「エド。」
「あぁ。」
しっかりとセリム・プライドを睨みつけ同時に地面を蹴りだす。
勢いよく両手を合わせるエドワード。
以前エドワードからリークがあった、錬金術が使えない。という話。
少々懸念はしていたが使えるようだ。
「でぇぇりゃぁあああ!」
プライドに向かって僕は短剣を、エドは蹴りを見舞う。
「避けた…。」
ひらり。とまではいかないが身軽にこちらの攻撃を避けた。
「ビーネ。こりゃいけるかもしれねぇな。」
「気合、入れないとな。」
エドワードは機械鎧の脚を確かめるように地面に打ち付ける。
「アルが起きてくれればな。」
「心配だね。」
「随分余裕ですね。お喋りなんて。」