第31章 『再・再構築』 2
「中尉は無事だ。」
気丈に振る舞うロイだって、目の前でリザさんに何かあれば、勢いで両の手を錬成陣に乗せてしまうのではないかとちょっと思った。
「なんとしても言う事を聞いてくれないので、強制的に扉を開けさせてもらいました。」
セリムが僕らを見下すように言い放つ。
僕はロイの肩をぎゅっと掴む。
まだ、希望はあると縋るように。
「結果オーライというやつですね。これで厄介なマスタング大佐の戦闘力は0に等しくなりました。」
ロイの錬金術は国家錬金術師の中でも一位仁位を争うほどの実力。
今この状況でロイが使えないというのは非常に……
「無能……」
「言うなハニー……さすがに傷つく。」
「ごめん。」
僕らの様子を見て唇を噛んでいたエドワードが、肩を怒らせ『お父様』へ向きなおった。
「納得いかねぇ!」
勝利を確信し、一人悟ちていた『お父様』が視線をこちらに向ける。
「てめぇさっき、『正しい絶望を与えるのが真理だ』って言ったな。まぁ、俺達みたいに自発的にやらかしたのは納得するさ。」
エドワード…。
「だが、する気のない奴が無理やり人体錬成に巻き込まれて視力を持ってかれて…それを正しいというのか!そんな筋の通らねぇ真理は認めねぇ!!」
エドワードらしい主張だ。
でも、確かに。
ロイは失う必要のないものを彼らに奪われた。
真理に、ではなく、彼らに、だ。
「お前が認めなくとも現実としてこうなった。事実を認めよ!錬金術師!」
「へ理屈にしか聞こえないよ!」
僕の叫びに『お父様』の目玉がこちらを向く。
倒れたまま動かないアルフォンス、側にいるメイ。
ロイとイズミさん。
エドワード。
「あんたはどうなんだ!」
僕は彼らの前に立ちそう叫ぶ。