第30章 『再・再構築』
「お前も案外子供だよな。」
「君は身長がお子様。」
「んだとテメー!もっぺん行ってみろ!」
エドとのいつものやり取りに、ようやく心の靄が晴れた気がした。
エンヴィーは父さんを二度も襲った。
きっと何処からか、手も足も失った父さんを見ていたんだと思う。
あんな姿になりながら、母さんやエリシアと笑ったり、僕と冗談を言い合ったり……エンヴィーはきっと見ていたんだ。
「チビ。」
「きぃいいいいいい!」
もし彼が人間だったら、僕のように誰かの愛を手に入れていたのだろうか。
彼がホムンクルスでも、誰かが手を差し伸べる事は出来なかったのだろうか。
ブラッドレイやセリムのように、嘘でもいいから愛を演じる事は出来なかったのだろうか。
エンヴィー。もし君がまたこの世に生まれる事があったのなら、次は僕が君に愛を教えてあげよう。
「……ヒューズとか言ったな。」
「はい?」
唐突にスカーが僕を呼ぶ。
「腕は平気か。」
「……おかげさまで。」
思いだした。
こいつに一度、腕をバッキバキにやられているんだった。
何のために今一度そんな事を言ったのか。
「思いだした。あんな錬金術が使えるのは、ジプシーだけだ。噂では消えたと聞いたが。」
「あぁ。消えたよ。僕が消してしまった。」
僕とスカーの会話に、前を歩いていたエドとロイも盛り上がっていた会話を止め、耳をこちらに向ける。
「消した?」
「僕は父を作ろうとした。」
「……罪、か。」
「えぇ。多少なりと貴方も〝錬金術師″なら解るでしょう。」
それ以上スカーは何も聞いてこなかった。
彼はきっと僕を理解した。
蔑んでいる事だろう。
錬金術師なら。
僕が、錬金術師である事は何事にも代えられない誇り。
けれど、錬金術師であるがゆえに犯した大罪。
「貴様の命は、神の慈悲か。」
「そう、かもしれませんね。」
まだやるべき事があるから。やらなければならない事があったから神様は僕に二度罪を犯させ、生かした。
罪を背負いながらでもやり遂げなければならない事がある。
「おやおや。こんなところにギャラリーが来るとは…緊張してしまうね。」
突然目の前に人影が見えた。
「さぁ…始めようか。」
僕はゴクリと息を飲む。