第30章 『再・再構築』
「なぁ、おチビさん!ホークアイ!マスタング!スカー!ヒューズ!…んでだ…なんでだ!なんでだ!!なんでだっ!!ちくしょおおおお!!」
「エンヴィー、おまえ…人間に嫉妬してるんだ。」
君は。
「お前らホムンクルスよりずっと弱い存在のはずなのに、叩かれても、へこたれても、道をはずれても、倒れそうになっても、綺麗事だとわかってても何度でも立ち向かう、周りが立ちあがらせてくれる。そんな人間がお前はうらやましいんだ。」
嫉妬(エンヴィー)だから。
「あ…こら逃げるな!」
機械鎧のエドの手から逃れようともがくエンヴィー。
思わず左手を伸ばしたエドがエンヴィーに咬まれ、右手を緩めてしまった。
びたり、と地面に堕ちたエンヴィー。
リザさんが思わず銃を向ける。
「待て。もう永くない。」
スカーがそんなリザさんを止めた。
「へ、へへ…屈辱だよ…こんなボロぞーきん見たいになって、あんたらニンゲンに…クソみたいな存在にいいようにやられて…しかもよりによって、そのクソの中でも更にクソみたいな…こんなガキに理解されるなんて…っ!」
…屈辱の極みだよ。そうエンヴィーは言いながら自分の喉の奥へ手を突っ込む。
ズルリと出てきたのは真っ赤な石。
「この先、その綺麗事がどこまで通じるか、せいぜいがんばる事だね。」
手に力を入れ、エンヴィーは自分でその賢者の石を砕いてしまった。
「バイバイ、エド…ワード・エルリック………」
エンヴィーは消えた。
いなくなってしまった。
「……自死か、卑怯者め。」
誰も何も言えなかった。
ようやく立ち上がったロイが、先へ進もう。と声をかけてようやく僕らは現実に引き戻された。
「ハニー。ヒューズを置いて来てしまった。」
「あ、あぁ。」
うん。父さん。
「これがすべて片付いたら、迎えにこよう。」
僕の頭を昔のようにぐしゃぐしゃとかき回すロイ。
その手が無性に父を彷彿とさせ涙が流れた。
「泣くのはまだ早いぞ。」
「……泣いてない。」
「ん?」
ぐいぐい。と汚れた服の袖で涙を拭いて顔を上げた。
「父さんは笑えと言ったんだ。泣くもんか。」
隣でエドワードが笑いだした。