第30章 『再・再構築』
「とにかく、大佐の所へ行きたい。」
「わかった。」
「うん。」
メイやキメラたちを先に行かせ、僕、エド、スカーの三人は来た道を慎重に戻り始めた。
先頭を歩くエドワードの背中は堅く、隣を歩くスカーは少し頼もしく感じた。
「ふざけるな!どけろと言っている!」
ロイの怒鳴る声。
ロイの足元には何やら小さな生物が踏まれていた。
聞いた事のないロイの怒鳴り声に、身が縮む。
エドが小さく、エンヴィーだ。と言って、地面を錬成しエンヴィーを助け出す。
ロイが僕らを睨みつける。
じゃまをするなと言わんばかりに。
「鋼の…そいつをよこせ!」
見たこともない剣幕のロイに息を飲んでしまう。
「もう一度言うそいつをよこせ、鋼の。」
「断る!」
ロイは一体何になってしまったのだろう。
「そいつには最低の死を与えてやらねばならない。よこせ。」
「いやだ、と言っている。」
「そいつをよこせ鋼の!!さもないとその右手ごと焼くぞ!!」
「上等だゴラァ!!ガチで勝負してやるよ!!」
吠える二人。
方や悪魔のように…
「その前に鏡で手前のツラよく見やがれ!んなツラでこの国のトップに立つつもりか!大佐の目指してるのはそんなんじゃないだろ!!」
方や願いを叫ぶように。
「……激情に任せ畜生の道に堕ちるか。それもいいだろう、こちら側に来るというならとめはせん。」
スカーは堕天使のように。
「他人の復讐を止める資格は己れには無い。ただ、畜生の道に堕ちたものが人の皮を被り、どんな世を成すのか見物だなと思うだけだ。」
「大佐にエンヴィーを殺させません。だからと言って奴を生かしておくつもりもありません。私が片付けます。」
ロイに向かって牽制の銃を構えているリザさん。
「やっとだぞ!やっと追い詰めたんだぞ!!」
「わかっています!でも!」
僕はあまり二人の事を聞いた事は無いけれど、今リザさんは辛いはずだ。
「今の貴方は国のためでも仲間を助けるためでもない!!憎しみを晴らす。ただそれだけの行為に蝕まれている!!」
憎しみ、復讐。
どれもアマイ文言。
「お願いです大佐…貴方はそちらに堕ちてはいけない…!」
わずかだが震えて見える銃の先。
ロイお願いだから、リザさんを悲しませないで…。