第28章 『再・分解』 3
あたたでス…。と言いながらお尻をさする女の子はたぶんエドワードたちが捜していた女の子メイだろう。
「スカーさん!エドワードさんも!」
すたたた。とこちらに逃げるように走ってくるメイ。
「バカ者!なぜ帰らなかった!」
「あっ、あの!ビーネさんという方ハ!」
「僕だけど?」
メイの事を心配するスカーをよそに、返事を返した僕へ慌てたような視線を向けて来た。
「お父上ガ!」
そう、メイが言った直後、キィ、キィ。と母さんが押す車いすと、それに乗せられた父さんが目の前の大きな扉の向こうから現れた。
「父さん!?母さん!?」
「違いまス!あれは!」
僕の足にしがみ付き必死に僕をそちらへ行かせまいとする。
「まぁ、ビーネ。こんなところにいたのね。さぁ、お父さんと一緒に帰りましょう?」
にんまり。と言った方が正しいだろう。
笑った母さんは僕の母さんではない。
あのとき。
中将と父さんを襲った奴。
本能的に腰から抜き取った短剣を母さんの額に向かって投げた。
「ちぇ。ばれちまったか。」
「ビーネさん!すみませン!」
事情はわからないが。
父さんは、目の前の今まさにバチバチと音を立てて姿を変える人造人間に、捕まっているのだ。
「エンヴィー!」
エドワードの唸り声でこいつの名前が判明する。
「エンヴィー…。」
「あの時、俺の事を退けた錬金術師さん。狩り損ねたこのおっさん借りてるよー。」
「僕をおびき出す、餌。ですか?ホムンクルス。」
「そーだよ。」
ベラベラとよく回る口が、どうやって父さんを病院から連れ出し、いまここにこうしているのかを逐一説明してくれた。
でも、僕には父さんがどんな経緯で、今僕の目の前にいるのかなんて必要じゃない。
「ねぇ。エンヴィーとか言ったね。」
「あ?人が話してんだよ。」
「どうでもいいんだけど。僕の父さん。返してくれない?」
自分の中で、あの時からずっと蓋をし続けてきた『怒り』という感情が、身体の奥そこからふつふつとマグマのように湧きあがってくるのが自分でもハッキリとわかった。
・・・