第28章 『再・分解』 3
ホムンクルス達の欲しがっている人柱。
その候補に入っている僕が、死んでいなくて生きていたとなれば、躍起になって探すのも無理はないし、父さんという餌を使っておびき出そうとするのは誰もが考えつきそうな作戦だ。
「生け捕りなら少し痛めつけても構わん!撃て!」
「おいおい!ここ病院だぞ!」
「きゃーーーー!」
突如院内で始まった銃乱射。
幸い敵にも腕があるようで確実に僕を狙ってくる。
非常階段をすべるように降りて鍵の掛かっていた扉を蹴破った。
しかし、そこには既に軍が待ち構えており、きっちりと銃がこちらに向けられていた。
「大人しくこちらに来てもらおうか。ビーネ・ヒューズ少佐。貴方のお父上もそれをお望みだ。」
拡声器を通して伝えられる言葉は完全に僕に事を悪者扱いしている。
何事だと窓から顔を出した患者や看護師たちがざわざわと音を立てる。
…今ここで捕まれば、ホムンクルスの計画にいいように使われてしまう。
どうする。
どうする?
じりじりとにらみ合いが続く。
下手に両手を動かそうものなら、すぐにでも射撃の許可が下りてしまいそうな雰囲気だった。
「手助けが必要かね?」
自信たっぷりと言ったロイの声が突然聞こえ。
出所を探ろうと視線を巡らせた瞬間、辺りが爆風に飲まれていた。
チャンスとばかりにとにかくここを離れる。
すると、目の前の道を塞ぐように止まったトラックの助手席が開き、リザさんが叫んだ。
「乗りなさいっ!」
慌ててトラックに乗り込み、ようやく事が理解できた。
リザさんの膝の上に申し訳なく座っている僕。
隣にはロイ、運転席にはマリア・ロスさん。
「ビーネ君、生きてたのね。」
「まぁ、こんなことではないかと思っていたよ。」
「僕も、色々あったんだよ。」
先ほどの現場から逃げるように走るトラック。
「ロイ、これからどこに?」
「第三研究所の地下だ。そこから侵入を試みる。」
「僕も行く。父さんが連れて行かれた。」
「……もちろんだ。」
事細かに説明している暇はもうない。
時間は刻一刻と迫る。